近隣の不登校生受け入れ 福島県教委「サポートルーム」 福島の5中学校「支援校」に 県内初
不登校生徒の居場所づくりのため、福島県教委が県内の一部小中学校に設けている「スペシャルサポートルーム」について、福島市教委は市内の中学校5校で近隣校の生徒を受け入れる方針を固めた。同級生と顔を合わせづらいなどの理由で登校が難しい子どもに配慮した学習環境を確保する。県教委によると、スペシャルサポートルームに他校の生徒が通えるようにするのは県内で初めて。 13日、市通年議会6月会議の一般質問で市教委が明らかにした。対象は福島四、信陵、北信、松陵、信夫の各中学校で、準備が整い次第、開始する。 スペシャルサポートルームは県教委が専任教員1人を配置し、空き教室で児童・生徒の学習指導をしたり、相談に応じたりする取り組み。不登校生徒が比較的多い学校など、県内各地の公立小中学校合わせて30校に設けている。主に県教委が市町村教委からの要望を受け、状況を確認した上で設置する。運用は各市町村教委が担う。
不登校生徒の近隣校での受け入れに関して県教委の許可は不要で、実施の有無は各市町村教委の判断に委ねるとしている。市教委は今回、不登校生徒の減少に向けて柔軟な対策を進めるため、県教委に相談した上で対応を決めた。 支援校への通学のイメージは【図】の通り。市教委は5校を新たに「不登校生徒地区支援校」と位置付け、地域ごとに近隣の不登校生徒を受け入れる方針。基本的に生徒が自分で勉強する教科や内容を決め、それぞれのペースで学習を進められる。机に間仕切りを置くなど、生徒の心情に配慮した環境を整える。他校から支援校に通った場合も在籍校への出席として扱う。 コロナ禍で学校生活が制限され、集団生活や対人関係に不安を持つ子どもが増えたことなどを要因に全国的に不登校生徒が増加傾向にある。市教委によると、市内の不登校の中学生は今年3月末時点で543人に上り、2020年3月末時点に比べて237人増加した。 佐藤秀美教育長は、スペシャルサポートルームなどは「不登校生徒の段階的な支援や新たな不登校の抑制などに重要な役割を果たしている」と述べ、「全市的な視野に立って、不登校やその傾向にある生徒が安心して過ごせる居場所づくりと学びの場の確保に努める」と語った。
■「子どもが抱える困難理解を」 県内NPO理事長 県内ではNPO法人や任意団体などが学校以外に子どもたちの居場所を設ける取り組みも広がっている。 県内2カ所でフリースクールを運営しているNPO法人寺子屋方丈舎(会津若松市)の江川和弥理事長は「学校の中で子ども中心に学ぶ形になるなら、新たな取り組みとして生きてくるだろう」と福島市教委の方針を歓迎しつつ、児童・生徒の中には「学校」という場所自体に違和感を持つケースも多いと指摘。「取り組みを通じ、子どもたちがどんな困難を抱えているかに教員が理解を深めるのも大切ではないか」と話した。