万博の〝目玉〟空飛ぶクルマの商用飛行断念 開幕200日前 機運醸成にはマイナス
2025年大阪・関西万博で日本初の商用運航を目指していた「空飛ぶクルマ」が、デモ飛行にとどまることになった。商用飛行は「未来社会の実験場」を掲げる万博での象徴的な体験イベントと期待されていただけに、機運醸成にマイナスの影響が出ることは避けられそうにない。 【写真】米ジョビー・アビエーションが開発する空飛ぶクルマ 万博で運航する事業者のうち、丸紅は令和5年春に商用運航を断念。今年7月にはスカイドライブ（愛知県豊田市）も続いた。 同社の福沢知浩最高経営責任者（CEO）は技術的な課題が多く、必要な安全性を確保することが困難との認識を示した。商用運航には機体ごとに安全性などが国の基準を満たすことを示す「耐空証明」を取得することが必要だ。各陣営にとり、この段階がなかなか越えられない障壁となった。 ANAホールディングスは万博では操縦士だけが機体に乗り、万博会期中のうち数週間、会場周辺を周遊する方針だ。同社の関係者は、機体の開発自体は順調に進んでいるとし、「万博が空飛ぶクルマを披露する貴重な機会であることに変わりはない」と語った。 一方、万博は不人気がささやかれ、入場券の販売は伸び悩んでいる。万博を推進する関西財界の関係者は「ついに目玉がなくなった。記憶に残らない万博になってしまうのでは」と危惧する。 来年4月の開幕まで200日を切った大阪・関西万博。成功に向けては、空飛ぶクルマに代わる魅力的なコンテンツが早期に示される必要がある。（井上浩平）
