<どうなる安保法制>「平和の党」公明党はどこへ 薬師寺克行・東洋大教授
自自連立で現実路線が定着
再び自民党政権時代となったのですが、政治の風景は大きく変わっていました。多党化が進み自民党は国政選挙で単独過半数の議席を獲得できなくなっていました。そこで自民党は野党内で孤立していた公明党に目をつけて、連立政権参加を働きかけてきました。それが実現したのは1999年、小渕内閣の時でした。 その時、公明党の安保政策はほとんど自民党と変わらないものになっていました。小泉純一郎内閣では、2001年の米国での同時多発テロを受け自衛隊をインド洋に派遣するための「テロ特措法」、2003年の米国のイラク戦争後の復興支援などのための「イラク特措法」に、公明党は積極的に関与し成立させました。そして、今回、安倍内閣での集団的自衛権容認に至ったのです。 振り返ると、「平和の党」の看板を掲げる公明党の安保政策は、決して観念論的、理想主義的な平和主義ではなく、むしろ、時々の国内政治状況や国際情勢を反映した極めて現実主義的なものであることがわかります。だからといって、自民党のタカ派と同じというわけではありません。憲法9条の改正には反対ですし、軍事力を前面に出すような極端な政策は受け入れず、あくまでも外交によって問題を解決する国際協調主義は維持しています。今回、集団的自衛権の発動要件についても「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される」と厳しい条件を求めたのは公明党でした。 自民党の提起した政策が気に入らないからといって連立を離脱することも可能ですが、そうなると小選挙区制で公明党が単独で当選者を出すことはほとんど不可能です。外交・安保という大きなテーマで公明党から積極的に新しい政策を提起することもできますが、議席数は自民党のほうが圧倒的に多いわけですからあまり現実的ではないでしょう。結局、自民党の提案にいろんな条件をつけて一部修正を実現することで存在感を示すのが精いっぱいかもしれません。それが冒頭に紹介したような正反対の評価につながっているのです。当然、熱心な支持者らに不満がたまるかもしれません。安倍晋三首相は憲法改正にも意欲を見せていますが、タカ派主導の自民党にいつまでお付き合いするのか、引き続き公明党の対応を注視しておく必要があるでしょう。 -------------- 薬師寺克行(やくしじ・かつゆき) 東洋大学社会学部教授。朝日新聞論説委員、月刊誌『論座』編集長、政治部長などを務め、現職。著書に『現代日本政治史』(有斐閣)、『証言 民主党政権』(講談社)、『外務省』(岩波新書)。編著に、『村山富市回顧録』(岩波書店)、「90年代の証言」シリーズの『岡本行夫』『菅直人』『宮沢喜一』『小沢一郎』(以上、朝日新聞出版)など。