抽象画の歴史を塗り替えるかもしれない画家、ヒルマ・アフ・クリントの個展が、2025年、東京で開催!
世界で最初に抽象画を描いたかもしれない画家として、急激に再評価が進む画家がいます。「ヒルマ・アフ・クリント展」(仮称)はアジアで初めて、彼女の画業を紹介する展覧会。高さ3メートル超の絵画作品も出品される、大型の回顧展です。 【フォトギャラリーを見る】 ヒルマ・アフ・クリントは1862年、スウェーデンで生まれた。1887年に王立美術院を卒業し、肖像画や風景画で成功した画家だった。が、彼女はクライアントの注文をこなすのと同時に精神世界や神智学に傾倒する。当時、降霊術などは文学や芸術の分野でも流行していた。政治や科学、そしてアートも激動する時代で人々は新しい価値観を求めていたのだ。
そういった「見えない世界」を描くべきだという“天啓”を受けた彼女は円や渦巻き、三角形などによる絵画を描き始める。1906年ごろから1915年までの間に制作した193点の「神殿のための絵画」の多くは抽象絵画である。その絵画は、それ以前に他の画家が描いていたものとは全く違うものだった。一般に抽象画の祖とされるカンディンスキーは手紙で「私が初めて抽象画を描いたのは1911年」と発言しているが、ヒルマ・アフ・クリントの抽象画は彼に先がけている。
ヒルマ・アフ・クリントはカンディンスキーや同じく抽象画で知られるモンドリアンと同じ、1944年に没する。しかし生前の彼女は自らの抽象画をごく限られた人にしか見せなかった。カンディンスキーらに比べてヒルマの名がほとんど知られることがなかったのはこのせいでもあるだろう。彼女の作品が一般の人の目に触れるようになったのは1980年代になってからのこと。そして2018年、ニューヨークのグッゲンハイム美術館で開かれた回顧展は同館史上最高の60万人を動員した。
東京での展覧会はアジアで初めて、ヒルマ・アフ・クリントの作品を包括的に紹介するものになる。展示されるおよそ140点の作品はすべて日本初公開だ。高さ3メートルを超える10点組の絵画《10の最大物》など大型の作品も並ぶ。抽象画の歴史はもちろん、美術史におけるスピリチュアリズムやフェミニズムの意味についてもさまざまな発見がある展覧会になるだろう。
ヒルマ・アフ・クリント展(仮称)
〈東京国立近代美術館〉1F企画展ギャラリー 東京都千代田区北の丸公園3-1。2025年3月4日~6月15日。10時~17時(金曜・土曜は~20時、入館は閉館の30分前まで)。
text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano