トランプ氏指名、次期米駐日大使に〝強面〟グラス氏 〝大目に見てもらえる〟は甘い、日本に迫るのは「駐在米軍経費負担増」か「関税」か
【ニュースの核心】 対中強硬派で元投資銀行トップ ドナルド・トランプ次期米大統領が、次期駐日大使に元投資銀行トップのジョージ・グラス氏を指名した。グラス氏は第1次トランプ政権でポルトガル大使を務めていた当時から「中国に厳しい姿勢」で知られていた。対日外交は、どうなるのか。 【写真】駐日大使に指名された大口支援者のジョージ・グラス氏 グラス氏はポルトガル在任中の2020年9月、同国への進出を目指していた中国の通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」について、「ポルトガルは米国を選ぶのか、中国を選ぶのか、決めなければならない。ネットワーク・プロバイダーに中国企業を選ぶなら、重大な結果を招く」と指摘して、反対した。ポルトガルのマルセロ・レベロ・デ・ソウザ大統領は「国の運命を決めるのは、国民に選ばれた代表だけだ」と反発し、外交問題に発展していた。 トランプ氏は、グラス氏指名に際して自分のSNSに、「投資銀行の元社長として、ジョージは大使の仕事にビジネス感覚をもたらしてくれるだろう」と投稿した。 これは何を意味するのか。 トランプ氏は第1次政権の19年、日本に対して在日駐留米軍経費の負担を4倍に増やすよう要求した。現在の日本を取り巻く安全保障環境の厳しさは、当時とは比較にならない。 そう考えれば、トランプ次期政権が米軍経費の大幅増や、日本の防衛費拡大を要求してくるのは確実だろう。その際、トランプ氏は「要求を拒否するなら、日本の輸入品に対する関税を引き上げる」という切り札を切ってくる可能性が高い。「関税カード」だ。 これには前例がある。 トランプ氏は、カナダとメキシコに対して、「米国への不法移民と麻薬の流出を止めなければ、25%の関税を課す」と表明した。カナダのジャスティン・トルドー首相は、慌ててトランプ氏のフロリダの別荘に駆けつけて、3時間にわたってトランプ氏と会談したほどだ。 北大西洋条約機構(NATO)の同盟国であるカナダでさえ、手加減しないのであれば「日本は大目に見てもらえる」と考えるほうが甘い。 まして、日本は米国が最大のライバルであり、脅威とみなす中国に対峙(たいじ)する最前線国家だ。その日本を守る駐留米軍経費を負担するのは、トランプ氏からみれば、当然の話なのだ。グラス氏は、そんなトランプ氏の意向をくんで、「日本は負担増を受け入れるのか、それとも関税を選ぶのか」と迫ってくるのではないか。