スーツの青山、らしくない「モード服」に本気の理由、外部人材を起用した新ブランドでイメージ刷新
ブランドのディレクターを務めるのは黒石奈央子氏。カジュアルブランド「AMERI(アメリ)」などのディレクターを務め、ヴィンテージアイテムを取り扱うセレクトショップ「アメリ ヴィンテージ」も立ち上げている。 黒石氏はこれまで、スーツなどのオフィスウェアを監修したことはなく、「人生でオフィスウェアをほぼ着たことがない」という。今回は商品の生地からシルエット、裏地やボタンの細部まで監修した。黒石氏は「(職場という)縛られたルールの中で自分らしいファッションを楽しめるオフィスウェアを提案したい」と意気込みを語っている。
■オフィスウェアを買わない層にアピール 青山がスーツになじみのない黒石氏を起用したのは、トレンドに敏感な20~30代の女性へのアプローチを狙っているからだ。 もちろん、青山もターゲット層に向けた服を作ることはできるだろう。しかし、従来のスーツにとらわれない商品を企画するのは、外部の人材でなければ難しい。 黒石氏は20~30代女性向けのブランドを立ち上げた実績があり、インフルエンサーとしての顔も持つ。
インスタグラムのフォロワー数は29万人(9月時点)。黒石氏を通じて、普段オフィスウェアを買わない層にも青山を知ってもらう狙いがある。 シスではSNSを活用した戦略を進めてきた。ブランドの告知は7月から始め、ブランド名やビジュアル、商品イメージを公開。全貌は公開せず、インスタグラムのアカウントで少しずつ情報を発信してきた。ECと店頭販売で期間を空けて販売する方法は、20~30代に響く戦略だという。
黒石氏も発売に先駆けて、商品を一つずつインスタグラムのライブ配信で紹介するなど、投稿を続けている。 青山の執行役員でTSC事業本部長の河野克彦氏は「(新ブランドで)当社になかった知見を生かしながら新規顧客を開拓する」と語る。スーツスクエアの店舗とECで売り上げを拡大していく構えだ。 ■ローンチパーティーも実施 青山は現在、スーツスクエアへのリブランディングを進めている。都市部を中心に出店してきた前身の「ザ・スーツカンパニー」をなど4業態を集約し、屋号を改めたものだ。そんな中で、シスは新たなイメージを打ち出す重要戦略の一つと言える。
今回のブランド立ち上げに際して、報道陣向けの発表会と併せてローンチパーティーも開催。ファッション誌関係者やインフルエンサーが来場し、商品を試着したり、スマホで撮影したりするなど、会場はにぎわいを見せていた。 パーティー形式でファッション関係者を呼ぶイベントは、広報担当者も「今まであまりなかった」と語るほど、従来の青山のイメージを覆す新しい試みになった。 異例の取り組みとなった新ブランド。SNSを起点にターゲット層に届けられるか。今年の秋冬は大勝負のシーズンになりそうだ。
井上 沙耶 :東洋経済 記者