「もしトラ」リスクの典型 米バイデン大統領の「日鉄のUSスチール買収」反対表明
中国やインドに対抗するためにも規模を広げたい日本製鉄 ~金を掛けずに技術を手に入れられるUSスチール
飯田)習志野市の“オイドン”さん(61歳・会社員)からメールをいただきました。「買収できたら日本製鉄にメリットはあるのでしょうか? 記憶に新しいのが、東芝の米原発会社(ウエスチングハウス)買収による巨額損失の件です」といただきました。 吉崎)東芝の件は原子力ですが、今回は鉄鋼ですからね。粗鋼生産量で言うと日本製鉄は世界第4位で、USスチールは世界27位なのです。鉄は完全な装置産業なので、日本製鉄としては、これから中国やインドの会社に対抗するためにも規模を広げたい。それが1点目です。2点目に、世界でいちばん高品質な鉄を買ってくれるのはアメリカなのです。であればアメリカに確たる足場をつくっておきたい。例えばEV向けの自動車鋼板ですが、EVはエンジンが重いので鉄板を極力軽くしなければいけない。そんなものをつくれるのは日本製鉄ぐらいしかいません。 飯田)軽くて強いものをつくれるのは。 吉崎)日本製鉄としては、自分にできてUSスチールに絶対できないものを彼らにつくらせたら、確実に儲かるわけではないですか。だから極めてリーズナブルな作戦だと思います。 飯田)彼ら(USスチール)としても、お金を掛けずに技術開発できる部分もあるのですか? 吉崎)買収されてしまえば、それが手に入るわけです。
「もしトラ」リスクの典型
飯田)企業買収に関しても、大統領選挙が濃厚に絡んでくる。 吉崎)「もしトラ」リスクの典型ですよね。しかもUSスチール本社があるペンシルベニアは、激戦州の1つですから。バイデンさんにしてみると、ここを1つでも獲られたら大変なので、背に腹は代えられない状況です。 飯田)なりふり構っていられない。