2024年に売れたマンガの傾向とは 「異世界」モノに変化、「実録風」の健闘…次のヒットのカギは女性マンガにあり?
■女性にも人気の異世界ファンタジーに変化? 派生形“悪役令嬢”や“溺愛”からさらに枝分かれ
もともと異世界ファンタジーや転生モノは、当初は男性の“なろう系”小説やマンガから始まったものの、現在では女性向け作品にも進出してトレンドに。さらに進化を続け、“悪役令嬢”“溺愛”といった派生ジャンルを生んでいる。 「現実にはないきらびやかな世界観は昔から少女マンガで好まれる要素で、異性界ファンタジーとも相性が良かったのだと思います。また出版マンガに比べて、読者の反響をフットワーク軽く作品に反映できるのも電子コミックの強み。人気ジャンルが枝分かれし、独立したジャンルへと発展していくスピード感は、電子コミックならではかもしれません」 こうしたジャンルの枝分かれは、特に少女、女性マンガで顕著に見られるようだ。 「昨年頃まで少女マンガで圧倒的に人気だった“溺愛”要素を含む作品にも、やや変化が見られるようになりました。当社ランキングでは1位『おひとり様には慣れましたので。婚約者放置中!』、2位『拝啓見知らぬ旦那様、離婚していただきます』と、いずれも主人公は愛はされつつも、それだけに流されない強い生き方を提示しているのが特徴です」 マンガは時代の写し鏡。女性マンガではかねてより“強い女性像”に根強い人気があったが、ガールクラッシュ傾向が異世界ファンタジーにも表れているのは興味深い。今後、一大ジャンルに成長していくか注目したいところだ。 ■“異世界”が席巻するなか、なぜ“実録風”が健闘? SNSやネット掲示板との親和性の高さも ただ、あらゆる電子コミックサービスが異世界ファンタジーに席巻される中、ひとつ特徴的な動きがある。コミックシーモアの女性ジャンルにおける、“実録風”マンガの人気ぶりだ。世間的にも人気となったコミックエッセイとは創作である点で異なるが、SNSやネット掲示板などでも話題の事柄を取り入れている。現実を忘れさせてくれる異世界モノとは真逆とも言える、リアルで身近な作風がウケるのはなぜか。 「土台としては、やはりSNSがあると思います。人間の生々しい感情が渦巻くSNSは、それ自体がもはやエンタメ。自分の身に降りかかったことをマンガ化して、SNSで発信する方も多いですよね。ただ現実はやはり現実で、モヤモヤが残ってしまうことも。創作だからこそスカッとした決着まで味わえて、かつ身近な出来事のように共感もしやすいのが“実録風”マンガが支持される理由なのだと思います」(シーモアコミックス 第二編集部プロデューサー/以下同)