広島サミット記念館が地味すぎる? 「もっと入りやすい外観に…」「広島ビジョンの展示がない」サミット研究者が指摘
G7首脳が核軍縮文書「広島ビジョン」に合意した広島サミットから1年となった5月19日、広島市の平和公園内に「G7広島サミット記念館」がオープンした。広島サミットのレガシーはどう引き継がれているのか。 【画像】「G7広島サミット記念館」で首脳たちの芳名録をじっと見る外国人観光客
3メートルの円卓など約100点を展示
G7広島サミット記念館には、サミット初日のワーキングディナーで使用された直径約3メートルの円卓など、約100点のゆかりの品が展示されている。 建物は原爆資料館の出口の真前にあり、入館無料。外国人観光客が熱心に展示を見る様子もあった。 イギリスから来た観光客は「G7サミットのニュースは見ていたが、ここでサミットが開かれたことを実感するきっかけになった」、ドイツから来た観光客も「サミットが開かれたのはニュースで見ました。この記念館の展示を見て興味深かった」と話す。 また、フランスから来た観光客は「フランスのマクロン大統領が各国首脳と一緒に広島サミットの写真に納まっていることを誇りに思う。絶対にフランスに戻ったら広島で何が起きたのかを伝えたい」と、被爆の実相に触れた思いを話してくれた。
首脳らが感情を込めて書いた芳名録も
この記念館を、サミット研究で知られる名古屋外国語大学の高瀬淳一教授と共に訪れた。 ーー最も印象に残った展示物は? 「各首脳がお書きになった芳名録の展示が非常に印象に残りました。他のサミットで書かれたものもどこかに展示されていますが、広島サミットの場合、原爆資料館を見て、それから被爆者の話を聞いた後に各首脳たちが感情を込めて書いた言葉ですので、じっくりと見ていただきたいなと思います。配偶者の方、広島を電撃訪問したウクライナのゼレンスキー大統領の言葉もあります」 アメリカのバイデン大統領は原爆資料館を見学した際、芳名録に「世界から核兵器を最終的にそして永久になくせる日に向け共に進んでいきましょう」と書き残している。
記念館を「もっと入りやすい外観に」
一方、高瀬教授は展示内容について“物足りなさ”も感じている。 「サミットの研究者としての立場からいうと、サミットは国際会議であって、首脳たちが共通の政策について合意し、それを文書化する。歴史的に正式な国際上の約束事になるわけですから、展示のどこかに「広島ビジョン」が作られたことも記録として残しておいたり、首脳宣言の文言や、広島の地でこういう約束がなされたという説明があってもいいかなと感じました」 国際会議の成果について、具体的な展示がほとんどないのではないかと指摘。 広島サミット県民会議事務局によると「サミットを知らない人にまずは知ってもらうために、わかりやすい展示内容を意識した」ということだが、高瀬教授は「知ってもらうためだとすれば、G7広島サミットのロゴを外に出すなど入りやすい建物にしてもらいたかったですね。外観にもう少し工夫もあってもいいかな」と助言する。 確かに、記念館は目立たない外観で、目に止まらなければ通り過ぎてしまいそうである。事実、訪れる人の中には「広島サミットの開催を知らなかった」という声も聞かれた。