巨人・桑田真澄2軍監督が語る育成プラン…浅野に足りないのは「野球脳」舟越には「打てないなら3軍」伝えると嬉しい変化
巨人・桑田真澄2軍監督(56)がファームの現状を伝えるコラム「桑田の眼」。第2回は開幕から2か月がたったチームの方向性や、浅野翔吾外野手(19)、舟越秀虎外野手(22)の育成プランについて語った。 【写真】桑田2軍監督が浅野を「すばらしい」と絶賛した姿とは * * * 2軍の役割に関して、4月中は1軍への戦力供給と育成の比重が9対1でしたが、5月からは育成の比重を少し上げています。選手個人の能力向上については、長打力や走力、守備力など長所を伸ばす練習に取り組んでいます。その上で、試合では1点をしぶとく取り、1点を粘り強く守ることをテーマにしています。 個別の選手に話を移すと、浅野は走攻守で課題が明確になってきました。長打力や足の速さという潜在能力はずば抜けている反面、大学・社会人を経て入団したチームメートと比べると、走攻守の全てにおいて野球脳に差があります。野球というスポーツは1球ごとに局面が変化して、求められるプレーも変わります。そういった細かい判断力が磨かれると、1軍で活躍する道が開けるでしょう。「ローマは一日してならず」という言葉を信じて、浅野には技術や体力だけではなく、野球脳も鍛えてもらいたい。たとえ失敗しても「次に生かそう!」と切り替えて声を出す姿は素晴らしいし、ほかの選手にも見習ってほしいところです。 育成選手の舟越は足でアピールしています。彼の武器を生かすためには三振やポップフライを減らして、あらゆる方法で出塁することです。しかし、春のキャンプから見ているとバットにボールが当たる確率が低くて空振りが多く、出塁が難しい状態でした。課題克服のために科学的なアプローチを活用し、BLASTという測定機を使ってスイングを数値化しました。 注目したのは、スイングが投球の軌道に重なる割合を表す「オンプレーン率」。数値が高いと球を捉える範囲が広まり、インパクトの確率が高まります。この割合が「2か月以内に60%以上にならないと3軍」と伝えました。厳しく聞こえるかもしれませんが、「打てないから3軍に降格」と突然、処遇を伝えるよりは前向きなやり方だと判断しました。 うれしかったのは、当初30%程度だった数値が、70%程度まで上昇したことです。それに比例して、打球が前に飛ぶようになりました。安打を打って塁に出られるようになった今は、鈴木尚広コーチと二人三脚で磨いた走塁スキルを生かして盗塁数を伸ばしています。近い将来、鈴木コーチの現役時代のように1軍で走塁のスペシャリストになることを目指しています。 試合がない時には座学も取り入れています。まずはストライク・ボールのカウント別打率というシンプルなデータを教材に、投手陣にカウントの稼ぎ方や打ち取り方を学んでもらっています。データ全盛の近年は球速や変化球の軌道に目が向きがちですが、カウント球、見せ球、勝負球を使い分けることで、投手本来の目的である「アウトを取る」技術の向上を図っています。 育成には時間、情熱、愛情の3つが大切だと実感する日々ですが、成長を間近で感じられることは非常にやりがいがあります。選手と対話しながら挑戦してくれているコーチ陣、専門職のスタッフと三位一体となりながら、1歩ずつ前に進んでいきたいです。(巨人2軍監督・桑田真澄) ◆BLAST ミズノ社製の打撃用測定機器。バットのグリップエンドに装着してスイングすることで、打球速度や角度、推定飛距離、スイングスピード、オンプレーン率など最大で13項目の数値測定が可能。巨人では萩尾が、昨オフ合同自主トレを行った日本ハム・松本剛の助言を受けて自費で購入し、今季の飛躍の土台を作った。
報知新聞社