「転んでも、笑って。60才からはご機嫌に生きていきましょう」”還暦の準備”を綴ったエッセイが話題の料理家・山脇りこさん
料理家としてテレビや雑誌で活躍し、昨年はひとり旅をテーマにした著書がベストセラーとなった山脇りこさん。まもなく迎える60才を前に挑んだのが“還暦じたく”。新著に綴られた老いとの向き合い方、60代を過ごす準備について紹介する。 【画像】料理家・山脇りこさん、ブランドバッグを売ったお金で旅をしたときのスナップ
人気料理家、山脇りこさん「還暦じたく」を綴る
「あと数年で還暦なんですよ~」。明るくあっけらかんと語るのは、料理家の山脇りこさんだ。 NHK「きょうの料理」などテレビ番組で料理家として活躍する一方、台湾マニアの旅好きとしても知られ、ひとり旅の楽しさを綴ったエッセイ『50歳からのごきげんひとり旅』は昨年12万部を超えるヒットを記録。 そんな彼女が新たに選んだテーマは、ずばり還暦。60代からの人生の旅、老いと向き合った新著『ころんで、笑って、還暦じたく』が発売され、話題になっている。
50代後半で味わった心の傷
「気持ちよく晴れた日の朝8時半、バッタ~ンと転びました」 本書はそんな一文から始まる。住み慣れた部屋の中で転び、馴染みの公園で階段から落ちて転び、右手の小指を骨折してしまう。 「うすうすは感じていましたが、着実に老いへ向かう次なるフェーズに入ったのだと確信しました」と、転んだことによる痛みよりもむしろ“心の傷”を自覚し、この先に迎える還暦への準備の必要性を痛感する。 60代以降の人生をどう生きるべきか、「わが老いの先生」と呼ぶ最愛の母をお手本に、りこさんが実践する還暦じたくとは?
バブル時代に増えた「服」を減らす
長崎から上京し、バブル期を過ごした20代。『東京ガールズブラボー』(岡崎京子著)で描かれたキラキラした東京に憧れて地方から上京する主人公に共感しつつ、おしゃれだった母の影響から、「デザイナーズブランドの服をバーゲンで買いあさる、ファッション中毒だった」と振り返る。 第1章では、それらの服やモノを手放していく方法が綴られる。彼女がたどりついたのは、一般的な片付け方法とは異なる。服の「捨て方」ではなく「選び方」に主眼が置かれているのが面白い。 「新しい服を着ると、生きている気がする、それが私」と断言し、服を買うことをやめるのではなく、今着たい服、胸が躍るワクワクする服を着る、「クローゼットは新陳代謝が必要である」ことに思い至る。 処分に困る高級ブランドではなく、譲ったり処分したりできる価格帯の服を中心に、デニムなどは旅先の古着屋さんで偶然の出会いを楽しむという購入方法にシフトする。 30代のとき海外旅行で購入したシャネルのバッグを手放す「シャネル記念日」のエピソードも注目だ。リサイクルショップに売って得た5万円で新たな「旅」に出る。 「人生で初めて」味わったという非日常の旅がとても素敵なので、ぜひ本書でチェックしてみてほしい。