英中銀の利下げペース鈍化観測強まる、国債市場混乱に対応必至な情勢
(ブルームバーグ): 英国債相場やポンド下落を受け今週は労働党政権の動向に関心が集まっているが、イングランド銀行(英中央銀行)も利下げペース鈍化で対応を迫られるとエコノミストはみている。
中銀による市場介入は想定されていないが、失業率上昇や成長停滞の兆候があるにもかかわらず、インフレ抑制に向けた新たな決意表明を迫られるかもしれない。
JPモルガン・チェースのグローバルエコノミスト、ノラ・センティバーニ氏は9日にブルームバーグテレビジョンで「従来の市場想定水準まで利下げを進めることに中銀はますます確信を持ちにくくなるだろう」とした上で、「今や調整余地ははるかに狭まっている。財政健全化が実現しなければ特にそうだ」と分析する。
年明けから英国債利回りは急上昇し、ポンドは下落。低調な成長と物価高止まりでスタグフレーション懸念が再燃した。インフレがまだ抑制されていないほか、政府の景気刺激策によって同国債務が持続可能な水準を超えて膨らむとの懸念から、英国資産が大量に売られている。
労働党政権の予算案に盛り込まれた260億ポンド(約5兆600億円)規模の雇用主の税負担増加と最低賃金引き上げも事態を悪化させた。企業は価格に転嫁する方針だ。中銀が9日発表した企業調査によると、今後1年間に予定される値上げ率は4%と、昨年4月以来の高い数字となった。
またエネルギーコストと食品価格の上昇がインフレをさらに加速させる恐れがある。
元英中銀エコノミストで、ファゾム・コンサルティングのマネジングディレクターであるエリック・ブリトン氏は「中銀はまだインフレに対処できていない」と指摘する。
「インフレ率は低下したが、二次的効果がなお作用している。民間部門の賃金上昇率は持続不可能なほど高く、債券市場では中銀が長期のインフレを制御できなくなったとの見方が広がる。インフレ目標の信頼性回復には、この問題への対処が必要だ」と警告した。