カナダとメキシコは「非常に大きな代償を払うことになる」 トランプ氏、25%追加関税発表 中国には10%
トランプ次期米大統領は25日、就任初日にメキシコとカナダからの全ての輸入品に25%の関税を課し、中国からの輸入品に追加で10%の関税を課すと表明した。不法移民や違法薬物取引を巡る懸念を理由に挙げた。 「最初の大統領令の一つとして、メキシコとカナダからの全ての輸入品に25%の関税を課すために必要な全ての文書に1月20日に署名する」とトゥルース・ソーシャルに投稿した。 メキシコとカナダがフェンタニルなどの麻薬や不法移民の米国への流入を取り締まるまで関税を維持するとした。 中国についても、メキシコから米国への違法薬物の流入阻止に十分な措置を講じていないとし、「それが止まるまで、中国からの全ての輸入品に対し、あらゆる追加関税に加えて10%の追加関税を課す」と述べた。 トランプ氏はこれまで、中国の最恵国待遇を取り消し、中国製品に60%の追加関税を導入する考えを示してきた。 トランプ氏の投稿を受けて米ドルはメキシコペソに対し2%余り上昇し、対カナダドルでも1%高となった。日経平均は下げ幅を拡大し、米S&P総合500種Eミニ先物も下げた。 トランプ氏が予告するメキシコとカナダへの追加関税は、1期目の政権で北米自由貿易協定(NAFTA)後継として発効させた米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に違反することになる。 2023年はメキシコの輸出の83%以上を米国向けが占め、カナダの輸出は75%が米国向けだった。 トランプ氏は大統領選で勝利すればUSMCAの再交渉を行うと選挙戦で述べてきた。USMCAは2026年7月に見直しが予定されている。 <トランプ氏、カナダ首相と会談> カナダの関係筋によると、トランプ氏は今回の投稿後、カナダのトルドー首相と会談し、貿易と国境警備について議論した。同筋は「良い話し合いだった。今後も連絡を取り合う」と述べた。 全米外国貿易評議会のウィリアム・ラインシュ元会長は、トランプ氏がUSMCAの再交渉を早期に実施するため、関税で脅しをかけている可能性があると指摘した。 <中国「貿易戦争に勝者なし」> 在ワシントンの中国大使館は25日、トランプ氏の投稿を受け、貿易戦争に勝者はいないと強調。 「米国の対中関税問題について、中国は両国の経済貿易協力が本質的に互恵的であると信じている」とした上で、昨年のバイデン大統領と中国の習近平国家主席の合意を受け、中国は麻薬の密輸を取り締まる対策を講じてきたと説明した。 <メキシコ「根本的な問題解決に程遠い」> メキシコ与党・国家再生運動(MORENA)の下院トップ、リカルド・モンレアル議員は「二国間の制度メカニズムを利用して人身売買、麻薬取引、武器取引と戦うべきだ」とし「貿易報復をエスカレートさせても、国民の懐を痛めるだけで、根本的な問題解決には程遠い」とXに投稿した。 メキシコ財務省はトランプ氏が公約に掲げる関税について「メキシコは米国の最大の貿易パートナーであり、USMCAは国内外の投資家に確実な枠組みを提供するものだ」とコメントした。 バイデン政権下では不法移民の身柄拘束が過去最高を記録したが、バイデン氏はその後、新たな入国規制を導入。メキシコも規制の施行を強化しており、不法入国は今年、劇的に減少している。 トランプ氏の関税は、低コストの対米輸出拠点としてメキシコを利用しているアジアの自動車メーカー、エレクトロニクスメーカーなど外国企業にも影響を及ぼす可能性がある。 エコノミストはトランプ氏の関税政策で米国の輸入関税率が1930年代の高水準に逆戻りし、インフレ高進や米中貿易の崩壊を招き、他国が報復措置に動き、世界の供給網が大幅に再編する結果につながると予想する。 関税は製品を輸入する企業が負担するため、価格を転嫁するか、収益低下を受け入れることになる。