地上から観測困難な“光”を捉える宇宙望遠鏡は実現可能? 10万機以上の小型衛星を活用する斬新な計画
研究グループが提案するGO-LoWは、太陽と地球のラグランジュ点「L4」あるいは「L5」の近くに小型衛星を多数配備することで、仮想的な望遠鏡を実現する構想です。この“仮想”望遠鏡は、低周波電波用受信アンテナを搭載した3U(※2)サイズの「LN(Listener Node)」と、1機あたり100~1000機のLNを統括して地球との通信を可能にする、大きさにして1立方m未満の「CCN(Computation & Communication Nodes)」という2種類の小型衛星から構成される模様です。個々の衛星は安価であるため、故障した場合に交換しても費用を抑えることができるのだといいます。 ※2…3UはCubeSat(キューブサット)の規格で約10×10×30cmに相当する。
■低周波電波を観測する意義
低周波電波は、太陽系外惑星の磁場や恒星周辺の宇宙天気など、惑星の進化やハビタブル条件に関する重要な情報を含むといいます。太陽系外惑星のなかには我々の住む地球のように磁場のある惑星も存在すると考えられており、こうした惑星の磁場は大気散逸や惑星移動、生命の源となりうる化学物質の破壊など、惑星に関するさまざまなプロセスに影響を与えているといいます。太陽系外惑星の磁場を特徴づけるのがオーロラに起因するわずかな低周波電波であるため、こうした電波を捉えることがGO-LoWの大きな目的のひとつであるようです。 研究グループの見積もりによると、太陽系外惑星から放射されるわずかな低周波電波をとらえるためには、小型衛星を10万機以上打ち上げる必要があります。 GO-LoWの実現は、長年運用されてこなかった低周波電波用宇宙望遠鏡の復活を意味するだけではありません。10万機以上というばく大な数の衛星コンステレーションの実現や、単一望遠鏡に対する優位性を示すという科学的インパクトをもたらすといいます。 研究グループによると、GO-LoWの実現は10~20年後になるだろうということです。 Source NASA – The Great Observatory for Long Wavelengths (GO-LoW) Knapp, N. et al. – Great Observatory for Long Wavelengths (GO-LoW) NIAC Phase I Final Report Lazio, J. et al. – Magnetic Fields of Extrasolar Planets: Planetary Interiors and Habitability Zarka, P. – Plasma interactions of exoplanets with their parent stars and associated radio emissions Jester, S. et al. – Science with a lunar low-frequency array: from the dark ages of the Universe to nearby exoplanets Bartosz P. Dąbrowski, B. P. et al. – Prospects for Solar and Space Weather Research with Polish Part of the LOFAR Telescope
Misato Kadono / sorae編集部