【イベントレポート】手話を褒められた吉沢亮、「ぼくが生きてる、ふたつの世界」父親役俳優との年齢差に驚く
映画「ぼくが生きてる、ふたつの世界」公開記念舞台挨拶が本日9月21日に東京・新宿ピカデリーで行われ、キャストの吉沢亮、忍足亜希子、今井彰人、烏丸せつこ、でんでん、監督の呉美保が登壇した。 【画像】自身もろう者であり、役でもろう者を演じた忍足亜希子 本作の主人公は、耳が聞こえない両親のもとに生まれ、コーダ / CODA(Children of Deaf Adults)として育った青年・五十嵐大。彼は幼い頃から日常的に母の“通訳”をしており、周囲から特別な目で見られていることに戸惑い始める。大人になった大は故郷を離れて暮らすが、帰郷したある日、記憶の底に隠れていた母への気持ちがあふれ出す。吉沢が大を演じ、ろう者である今井と忍足が大の父母に扮した。祖父母役は烏丸とでんでんが担っている。 撮影から1年ぶりに集合したという、五十嵐家のメンバー。吉沢は「(撮影を行った)仙台を思い出しますね。皆さんそれぞれとお芝居するシーンはあったものの、子役ではなく僕が大を演じているときに家族全員が揃うシーンは多分なくて、『これが五十嵐家なのか』と新鮮さを感じています。個性豊かで楽しい家庭だなと思います」と楽しげにコメントする。忍足は「1年ぶりに家族みんなで揃うことができて本当にうれしいです。1年経ったのかと信じられないような気持ちです」と述べ、今井は「僕は正直1年ぶりということで気恥ずかしいような気持ちです。仙台では家族のように顔を合わせていたので、時間が空いて距離ができたような……。私だけですかね?」とキャスト陣の顔を見て笑みをこぼした。 烏丸は「今朝Xを見ていたんですが『ぼくが生きてる、ふたつの世界』のおじいちゃんおばあちゃんは娘に対して愛情がないのか? ひどい!と書き込まれていて。でもそういう脚本でしたので!」と苦笑いしつつ弁明。でんでんも「この夫婦はいつも喧嘩していますが、いがみ合いながらもみんな家族としてなんとなくつながっています」と説明し「吉沢さんはじめ皆さん、お芝居の仕方がすごく真面目なんです。そういう方々とお会いするのが不真面目な人間としてうれしかったです」と冗談混じりに話した。 オファー時を振り返り、吉沢は「呉監督の作品が好きでいつかご一緒したいと思っていました。特殊な環境の役ではありますが、作品で描いている普遍性がすごく素敵だと思い、ぜひにとやらせていただきました」と話す。忍足は「これまで男性の監督ばかりにお世話になっていたので、今回初めて女性監督からオファーを受けて非常にうれしかった。五十嵐家の家族の形や親子関係、親がろう者で子供は聴者であったりと、その複雑な気持ちを丁寧に撮影していきたいという監督の気持ちがよく伝わってきたんです。その気持ちにお応えしたいと思い出演を決めました。監督、ありがとうございました」と思いを伝える。また今井が「実は(親子役を演じた)吉沢さんとは3歳しか違わないんです。さらに28年間という長い期間を演じるので非常に緊張しました。僕の息子はろう者なのでCODAを育てた経験もなく、気合いを入れて臨みました」と話すと、吉沢も笑いながら「全然歳上の方だと思っていました。さっき初めて知った衝撃の事実でした」と驚きを語った。 MCから吉沢の手話について尋ねられた忍足は「一生懸命努力して手話を習得してくださって、本当にすごいと思いました。最高の息子です。手話に加えて口話のセリフもあるし、感情も込めた表現をしていらっしゃった」と絶賛。今井も「吉沢さんの手話は本当に自然なんです。『ありがとう』という手話も丁寧にやれば両手を使って表現するものですが、吉沢さんは片手。生活の中で使われるリアルな手話をやってくれましたので、家族の温かい環境と会話が表わせたと思います」とうなずいた。 キャスティング経緯を聞かれると、呉は「吉沢さんの演技のファンでした。内面にあるものをもっと見たかった。今回は感情はあまり出さない人物ですが、手話という技術も含めていろんな要素を持ってないと成立しない主役。吉沢さんならやってくれると思っていましたが、想像以上でした」と答える。忍足については劇中で登場する喫茶店のシーンを仮で演じてもらったときに起用を決めたと言い、今井に関しては「お父さん役の方がなかなか見つからなくて、最後にひょこっと」「オーディションのときに、こんなに役を入れてきてくれたんだと思わされましたし、年齢が不詳なので28年間を演じられるだろうと(笑)」と回想。また「烏丸さんは『明日の食卓』のファミレスの会話シーンがすごく好きで強烈につかまれたんです」と説明し、さらに「でんでんさんのことが大好きすぎる」「今回演じた役は難しいキャラクターだと思います。でも根底では悪い人間ではない。そこをでんでんさんの底抜けな明るさで、お芝居してくれるんじゃないかと思いました」と続けた。 最後の挨拶で今井は「今回、聞こえる皆さん(聴者)と一緒に作品を作りました。このような活動が徐々に広がってきていますよね。 映画館に行ったら当たり前にろう者が作品に出演しているような、そんな世界になればいいなと思います。俳優を目指している聞こえない人たちもたくさんいると思います。 いっぱいね、ライバルも出てくるかもしれません。でもいい仲間として切磋琢磨していければ」と語りかける。忍足は「手話は視覚言語で、相手の顔を見ながら会話をします。顔を見て気持ちを伝えることがとても大事だと思っています」と言い、吉沢は「いろんなところで映画について語ってきました。あとはとにかくたくさんの方に観てもらえるとうれしいです。ぜひ身の回りの方々に作品のよさを伝えていただけたら」とアピールしてイベントを締めた。 五十嵐大による自伝的エッセイをもとに、港岳彦が脚本を執筆した「ぼくが生きてる、ふたつの世界」は全国公開中。 (c)五十嵐大/幻冬舎 (c)2024「ぼくが生きてる、ふたつの世界」製作委員会