黒沢ともよ&悠木碧「安心してください。新作も、ちゃんと『モノノ怪』ですよ!」
◇映画では描かれない人生背景まで意識してます ――オーディションの話に戻りたいのですが、お二人はどんな意識でオーディションに臨まれましたか? 黒沢:アサは、とにかく長セリフばかり。誰かとの対話ではなくて、長セリフに特徴のある言い回しが欲しいってことなのかな?って、ぼんやりしたイメージを持って臨みました。母音を強めにというか、外郎売りのように、人が多い通りで話していても聞き取れるような喋り方を意識しました。 悠木:カメに関しては、それこそアサの資料があったうえでのカメだったので、元気で無法者でいいというか、人の枠にハマれないくらい自由で愛おしくもあるキャラクター設定なんだな、というのが見えていました。なので、マイクが割れるぐらい大きい声のほうがカメに近いんじゃないかな、というイメージで取り組みました。 ――実際のアフレコでは、どのようなことを意識されていたんですか? 悠木:カメは音量を絞ると小さくなってしまうし、普通に喋ると大きくなってしまう子なんです。劇中に夜のトーンで喋るシーンがあるのですが、そこは細かい部分までカメ像を深掘りしながら、演じていきました。 黒沢:アフレコでは、すでにカメの声があったんです。そこに合わせていく作業だったんですが、アサは物語の流れを背負っている子でもあったので、やはり違和感というのは自分の中で大事にしたくて、“鉄板の逆を行く”みたいなことをテストでやってみました。 気持ちだけはオーソドックスに進んでいくけど、声の語調を落としたときに、絵も複雑だからバッティングする可能性もあるし、逆に絵を1枚で長時間見せることもなくはないので、フラットな状態でうまくハマれば、声との対比が活きていいかなと思って提案したりしました。 ――演技に関して、中村監督からは何かオーダーはありましたか? 黒沢:大奥にたどり着くまでの人生がハードだったという背景がある子、としてやってほしいという話だけ監督からはしていただきました。なので、序盤のシーンで今までのことを捨てなければいけないカメとアサの反応が違うのは、そういう背景があるからなんです。表現してほしいわけではないんだけど、こういうことでこうなっています、みたいな。特にアサはそういうことが多かったですね。 悠木:そういえば、アフレコが始まる前に監督が「世界観を語りだすと本当に熱中してしまうから、先にお渡ししておきます」と言って、前日に収録した人に向けて監督が喋っているところを映した動画が送られてこなかった? 黒沢:じつは、私と花澤香菜ちゃん(北川役)に喋っていたところを、プロデューサーさんが撮ってくれていたんですよ。 悠木:そうだったんだ! 私はそれを見せてもらったときに、ものすごく愛や熱量を持って生み出されている作品なんだと感じました。 ◇中村健治監督がト書きに込めた思い ――今回、黒沢さんと悠木さんのアフレコは別々だったんですよね。 黒沢:そうなんですよ。私が現場に入ったときには、悠木さんは先に録り終えられていました。 悠木:でも、カメは人の話を聞いていないし、アサちゃんが全部、尻拭いをしてくれるところ含めて役どおりなので、逆に良かったよね(笑)。 黒沢:もちろん、一緒にやれたらなという気持ちはあったんですけど、意外とやりやすかったです。アサは拾って片付けていく担当なんだな、というのを痛感しました(笑)。 私は香菜ちゃんと2人で撮った日と、北川とのシーン以外を1人で撮る日があったんですけど、最初、北川がどの温度感で来るのかわからなかったので、香菜ちゃんと一緒にできて、あの質感の冷たさを感じられたのもすごいよかった。香菜ちゃんだからこそ、アサが北川から何か大切なものを受け取ることができたのかなって思いました。 悠木:私は、ゆかなさん(麦谷役)と甲斐田裕子さん(淡島役)と録ったんですけど、淡島とアサも、麦谷とカメも、根っこで大事に思っているものは同じ人たちで、少しでも出会い方が違ったら、良い先輩後輩の関係になっていたよね、という会話をしたんです。その話を先輩と一緒にできたのがうれしかったです。劇中ではあれですけど、裏では3人で仲良くやっていました(笑)。 黒沢:私は一緒に撮れなかったけど、楽しく撮ったんだろうなっていうのは伝わってきました(笑)。あと、今回はト書き〔※台本に書かれている、場面の説明やキャラクターの状態を表した内容のこと〕が多すぎて、たくさんめくりながら喋らなきゃいけないので大変だった記憶があります。 悠木:セリフが多いんじゃなくて、ト書きに込められた思いがすごくずっしりなんだよね。 黒沢:こんなにト書きあるのは、なかなかないですよね。 悠木:描かれない後ろの人たちの感情とかまで載っているんですよ。台本をめくるのと、絵のスピードについていくのがキツかったな(笑)。 黒沢:わかります! あと思ったのが、お客さんとして見ていたときは、すごく硬派な作品だと思って接していたんですけど、録り重ねていくうちに、一人ひとりのキャラクターの声をイヤホンで聞いていると、意外と誇張してポップに撮っているんですよ。それこそ、ハートマークとかが台本に書いてあって、“監督の心は乙女なんだな”って思いました(笑)。 悠木:私は1日で収録しきったんですけど、1日だけとなると、短時間でキャラを把握しきって同化しなきゃいけないのですが……この分厚い台本のおかげで、ものすごい理解が深まってありがたかったですね。 黒沢:これ売ってほしい…! 皆さんに監督の熱い思いを感じてほしいです。 ――お二人の話を聞いていると、どんな作品に仕上がっているのかとても気になります! 最後に、ファンの方へメッセージをお願いします。 黒沢:『モノノ怪』を知ってくださっている皆さまには「安心してください、ちゃんとモノノ怪ですから」と伝えたいです。題材は『モノノ怪』らしく、昔の日本と言いますか、大奥ではあるんですけど、描かれている内面のことは非常に現代的というか。 最近になって、ようやく私たちが言語化できるようになってきた心のツラさみたいなものとかに、いろんな人が立ち向かっていくっていうお話ではあるので、全女子に楽しんで見ていただけたらなと思います。 悠木:テレビシリーズを見たことある人には、絶対に劇場に見に来てほしいし、見たことない人も絶対に見といたほうがいい、話題にならないことがない作品だと思います。唐傘お化けって、日本ではずっと描かれている妖怪ですけど、“じゃあ、その唐傘ってなんだろうね、何が怖かったんだろうね”というのが残るんですよ。それを感じてほしいですし、その感じがとても『モノノ怪』らしいので、ぜひ楽しみにしていてください。 (取材:川崎 龍也)
NewsCrunch編集部