日本人の善意で成り立つ「鉄道忘れ物市」の仕組み
鑑定が正確過ぎても”面白み“がなくなる
100万円以上するような楽器やアクセサリーも稀にある。もちろん、正確に値付けがされれば、そうした高額商品は別途ネットで販売したり、ガラスケースに収めたりするが、掘り出し物を見つけるのが忘れ物市の醍醐味。「やはりそれが楽しみで来ている方がたくさんいますね。いつも正しく値段を付けてしまうと面白みがなくなってしまうので、スタッフは浅く広く物を知っておくように心がけています」と与儀さんは話す。 「以前沖縄で開催した時に、45万円するブレスレットが500円になっていたことがありました。お客さんに『ルーペを貸して』と言われたときは失敗した、と思いましたが、口コミで評判が広がったのか、翌日はたくさんお客さんが来てくれました。」
商品は毎日補充するため、毎朝通い詰める人も多いそうだ。数十万円分購入してネットで転売する業者や、地元のリサイクルショップ業者も訪れる。
残った「忘れ物」はアジアに
年4回ほどの催事やネット販売で売れ残った商品は、フィリピンやミャンマー、タイなど海外に輸出する。フィリピンでは、現地の業者がオークションを行う。
ペンなど数が多く分類に手間のかかる物は、「まとめて輸出した方がお金になるんですけれども、楽しみにしてくださる方もいるので」と、与儀さんが自ら分類し、まずは日本で販売する。 「中国の弁護士を入札に連れて行ったことがありますが、日本人はなぜ拾った物を届け出るのか、と不思議がっていました。商売としてやってはいますが、そうした日本人の善意を引き継ぎたいという思いもあります。」安いだけでなく、善意の連鎖と考えると、より買い物が楽しめそうだ。 (齊藤真菜)