佐久間宣行「出演者が次の仕事につながってほしい」、番組作りのこだわり明かす
DMM TVで「地上波では流せないコント番組」と銘打ったオリジナル番組「インシデンツ」のシーズン2が配信開始となった。同番組プロデューサーの佐久間宣行に、シーズン1からパワーアップしたポイントや、番組作りのこだわり、そして、自身への番組出演依頼が続く佐久間Pの今の状況について聞いた。 【写真】実は悪役が似合う?笑顔が怖い加藤浩次 ■芸人から「次は出たい!」と反響があった「地上波では放送できないコント番組」の新作 ――「インシデンツ2」についてお聞きします。シーズン1から進化したところや佐久間さん視点での見どころはどんな点でしょうか。 シーズン1が「地上波で放送できないコント番組」という、構成自体で驚かせるような番組でした。シーズン2は前作と違うストーリーとキャラクターにして、シーズン2から見ても大丈夫なように作ったんです。 今回は構成よりも、キャラクターとストーリーの裏切りとか、展開で楽しんでもらえるように作っています。コントとドラマっぽいものとか融合していく、ちょっとジャンルが違うもの、あまりジャンルと言えないようなものに着地したいなと思っていました。ぜひ軽い気持ちで見てほしいですね。 もう一つは、やっぱり出演者ですね。さらば青春の光もどんどん去年よりも大きくなっているし、ヒコロヒーも、みなみかわさんも本当に、全員売れたので嬉しいと思うのと、何と言っても加藤浩次さんが出てくれたことですね。実は加藤さんだけじゃなくて、芸人の方達が今回すごい出てるんですよ。隠れキャラみたいにたくさん出てくるので、その芸人の豪華さも楽しんでみてほしいです。 ――佐久間さんはバラエティーというジャンルではありとあらゆることをやってきていたので、「新しいこと」を考えること自体が大変そうですね。 いえ、そんなことないですよ。面白いことややりたいことはまだたくさんあります。バラエティーディレクターの中でできたことと、テレビ東京で予算がなくてできなかったこともたくさんあるんです。だから本当は実はまだたくさん企画あるんですよ。本当は「キス我慢選手権」とか3億ぐらい使ってやりたいんですけどね(笑)、そんなに予算なかったもので。 ――今回はシーズン2となりますが、シーズン1の振り返りについて聞かせてください。「地上波では放送できないコント番組」がテーマで、DMM TVオリジナルのローンチコンテンツとして発表されたシーズン1の反響はどうでしたか? 本当に実験的な構成だったんで、どう思われるかなと思ったら、予想よりも反響をいただいて。グッと感じてくれた人が多かったのが嬉しかったですね。あと、東京03とか芸人さんみんながとにかくカッコよかった。「かっこよくて面白いコント」はなかなか作れないから、芸人の方達が「出たい」って言ってくださいました。 ――「次は出たい!」って、作り手としては最大級の褒め言葉ですね。 嬉しかったです。だからもうほんとに嬉しくなって、シーズン2の今回はいろいろな芸人に声かけて作っちゃいました。 ――シーズン1も過激な内容で、「地上波では流せない」がテーマでしたが、佐久間さんが印象に残っていることは? 前作は、「環境は大事にするけど戦争はする」みたいなコントがあって、こんなの地上波で流したらめちゃくちゃ怒られるだろうなって思いながら作っていました。環境のためなら人死んでもいいみたいなこと。戦争はするけど環境は守ろう…みたいな。その疑問の提示の仕方が僕はくだらなくて好きでしたね。 ■注目キャスト、加藤浩次は「笑っている顔が怖い、悪い役やってもらったら最高」 ――シーズン2について話を伺います。作品のその性質上、ネタバレを避けつつ、佐久間さんが手ごたえを感じたポイント、見どころ、現場でのエピソードなど教えてください。 いや~、やっぱり森田くん(さらば青春の光)がいいですよ、本当に。うん、全編通して森田くんがいいです。面白いし、座長感あるし。 ――シーズン1でも森田さんは中心人物でありましたが、元々森田さんは芝居の実力や、座長気質の部分はあったんでしょうか。 いや、どうなんだろうな。でもまあ、事務所の社長だということも関係しているかもしれませんが、座長感というか、“カリスマ性”が出てきたと思いますね。 ――キャストについてもシーズン1から引き続き、さらば青春の光、みなみかわ、ヒコロヒー、とメインキャストが続投になりますね。みなさん2023年でさらに売れた芸人さんたちですが、続投キャストにしたのは理由があったんでしょうか。 単純に、伊藤健太郎さんもひっくるめて、シーズン1の座組みがすごいいいなと思ったからですね。 ――なるほど。その中でも今回大きな話題が加藤浩次さんの出演ですね。加藤さんを起用した理由や、彼の魅力はどのように捉えてますか。 付き合いが長くて僕がすごい好きだってのがまずあります。シーズン1は、國村隼さんに出ていただいたんですが、役者さんとしても重みがすごいじゃないですか。例えば國村さんに相当する役の存在感を“役者”さんで出すって、やっぱり國村さんクラスじゃないと相当難しい。國村さんにはかなわないなと考えた時に思いついたのが、加藤浩次さんだったんです。芸人としてかっこよくて、朝の情報番組の司会者もあんだけやってて。 ――加藤さんがいわゆるエンタメコンテンツに、演者として出てるのを見ることが久しぶりのような気もしますね。実際、加藤浩次さんに演じてもらって、どういう凄みがありましたか? いや…加藤浩次さんの笑ってる顔、ちょっと怖くないですか?(笑)。その、にこやかにしているのがめちゃくちゃ怖いなと思って。やっぱり「スッキリ!」を17年もやっていたのが、完全な“振り”になって悪い役やってもらうと最高だなと。いいキャスティングでした。 ――昨年、佐久間さんと藤井健太郎さんが、みなみかわさんについて、「面白くて、でもスケジュールが空いている“ちょうどいい芸人”」とおっしゃっていて、その後再ブレイクされましたね。佐久間さんからみたみなみかわさんはどういう魅力がありますか。 根っこの部分に人を馬鹿にしてるところがあるっていうのが、みなみかわさんの1番の魅力だと思いますし、やっぱり“お笑いの基本要素”はほぼ全部できるんですよ。トークもコントも面白いし、地肩の強さ、みたいなものがすごくある芸人さんですね。 ■佐久間Pの番組作りで大切にしていることは…「面白さファースト」と「タレントが次の仕事につながる」こと ――佐久間さんの番組を拝見すると、地上波、配信、YouTube、プラットフォームに全て出て、「ファン作り」「芸人へのリスペクト」「人を見る目」のすごさを感じます。番組作りに置いて心がけていることがあるのでしょうか。 そうですかね。才能をめちゃくちゃ見抜けるわけではないんですけど、いろいろなもの見ていて、「この人とこの人掛け合わせたら面白そうだな」「この企画掛け合わせたら面白そうだな」ぐらいですね。ポテンシャルまで全部見抜けるわけではなくて、あの人たちが勝手に売れていってるだけだと思うんです。でも、「企画が思いつく人」は大事にしていますね。 ――YouTubeの「佐久間宣行のNOBROCK TV」は特に顕著ですが、「新しい人気者を発掘する人」みたいな感じになってきていますよね。出演者のみなさんを「さん」付けで接するあたりに出演者へのリスペクトを感じます。 みんなね、ありがたいですよね。番組きっかけでちゃんと売れてくれればと。さん付けで呼んでいるのは、「出演者と適切な距離を保ちたい」からなんですね。若い頃に、出演者となぁなぁになって、つまんなくても編集でカットできなくなるような先輩を見てきたので、出演者との距離をちゃんと取ろうと思っています。 昔から、「自分の番組に出てもらった人が、自分の番組のためだけに使われている状態」にはしないように仕事していますね。どんな小さいポジションで出る人も、その人が面白いって言われたり、他の仕事に繋がったらいいなとは思っています。「甘い」って言われることも結構もあるけれど、結果的にそれが積み重なって、たまたま僕の作ったものから、予想外に売れてく人が多くなっているんじゃないですかね。 ――「面白い番組を作る」だけじゃなくて、「出演者が次につながってほしい」という思いがあるんですね。佐久間さんの番組に出ている若手の芸人・タレントさんはなんだか気になって調べてしまいます。 そう言っていただけるのはすごい嬉しいなと思うし、魅力的になるように編集も気を使っていますね。 ■CMや番組にも出演続く、“出役”を受けるのは「現場が見てみたいから」 ――佐久間さんご自身のことも伺います。2023年は出演者としてもひっぱりだこで、テレビCMにも出演されていました。出役として出る機会も結構増えたことで、ご自身の番組作りに活きていることはありますか? やっぱり自分の番組を作る方を優先しているのでオファーを結構断っているんですが、出演するのは「現場を見てみたい」ものですね。「日テレの特番ってどうやって作ってんのかな」「あの人どうやって演出しているのかな」「キンチョーの面白いCMはどうやって作っているんだろう」みたいなことですね。出演のお仕事は、実はめちゃくちゃプラスになってます。だって普段は自分の番組の現場しか見られないじゃないですか。出役の仕事は実は作り手人生でめちゃくちゃプラスになっていますね。 ――佐久間さんが今1番信頼してる芸人さんや、プロデューサー気質、ディレクター気質の芸人さんっていうとどなたが思い浮かびますか? 番組で一緒にやっている方達はみんな信頼していますよ。でも、番組をオーガナイズしてくれるっていう意味で言うと、特にその気質があるのは、麒麟の川島さんじゃないかな。番組をどういう枠組みにして出演者を輝かせるかってことに関してはすごく長けている芸人さんだと思いますね。 ――今、佐久間さんにきっとお仕事のオファーは沢山来ていると思いますが、バラエティーにこだわる理由は? バラエティーのディレクターはもうそろそろセンスがずれてくる年齢じゃないかって勝手に思っていて。50歳を超えたら、バラエティーじゃない仕事もやろうかなと思っています。ただ、これまでやってきた笑いの知見を活かせることをやりたいですね。そういう意味で言うと、「インシデンツ」もそこに足かけているなと思います。実はいろいろなジャンルのお話はいただいてますね。ありがたいです。 ――最後に改めて「インシデンツ2」への想いをお願いします。 シーズン2はもう、乗りに乗っている演者たちが、台本を越えて自在にコントやってるんで、それをぜひご覧にいただきたいです。すごい数の魅力的な芸人が出てくれています。芸人だけじゃなく、ファーストサマーウイカは1つのコントだけポンって出てくれたり、オードリーの春日くんや、アンジャッシュの渡部さんも。よく出演してくれたなっていう、ワンシーンしか出てこない方もいます。錚々たる出演者がこぞって悪ふざけをたくさんしているので、全部楽しんでほしいです。