「音楽生成AI」を大手レーベル3社が著作権侵害で提訴…一方で新聞出版業界同様「AIとの共存」を模索する流れも
生成AIに対する音楽業界は一枚岩ではない
今回、主要な音楽レコード会社はSunoなど一部の生成AI業者を訴えたが、必ずしもそうした新しいテクノロジーを一概に否定ないしは排除しようとしているわけではない。彼らはこうした訴訟と同時並行的に生成AIを開発する別の巨大IT企業とは交渉を進め、それを受け入れる可能性も示唆している。 英フィナンシャルタイムズなどの報道によれば、(グーグルの親会社)アルファベット傘下の動画サイトYouTubeは、ソニー、ユニバーサル、ワーナーの3社を含む主要レーベルとの間で、これらのレーベルに所属するアーティストの楽曲を(グーグルが開発した)生成AI「Dream Track」の学習データとして使用するライセンス契約に向けた交渉に入ったという。 仮に交渉が成立すれば、いずれYouTube上のショート・ビデオの中で、そうしたAIが著名アーティストらの音楽をベースにした楽曲を最大30秒程度に渡って生成して聴かせることになる。 またYouTubeは生成AIの学習データとして提供される楽曲の対価(ライセンス料)として、一括金をレコード会社側に支払うことを提案しているという。 もちろん成立するとは限らないが、主要レーベル3社が少なくとも交渉に入ったことから判断して、頭ごなしに生成AIを否定しているわけではない、という事が読み取れる。つまり「自分たちにとって何らかの得になるのであれば受け入れよう」という姿勢だろう。 ただし音楽業界側は一枚岩ではない。レコード会社はとにかく、肝心のアーティスト(の恐らく大半)が生成AIには基本的に反対の姿勢を表明しているのだ。 主要3社とYouTubeが交渉に入った事を受け、ビリー・アイリッシュやスティーヴィー・ワンダーなど200名以上の著名ミュージシャンが「AIは人間のアーティストの権利を侵害すると同時に音楽の価値を貶めるので、その使用を控えるべきだ」とする公開書簡に署名した。