「友だちを泣かせた3歳の子」を叱ってはいけない理由とは? 親が知っておきたい「心の発達の段階」
子どもにイライラしてしまう親が増えている?
私は個別のカウンセリングをしていたときに、子育てに困難を感じて悩んでいるというあるお母さんから、「どうしてみんな、普通に子育てできるんですか?」という悲痛な訴えをされたことがあります。改めて聞かれると、たしかにそうだよね、と思いました。 お母さんって、子どもを産んですぐ、何も知らない状態でスタートして、子育てが始まってしまえば訳もわからず待ったなしで走り続けなくてはなりません。本当に大変な仕事ですよね。そして、みんな普通に子育てしているように見えますね? 習ってもいないのに不思議ですよね? 実は、体が妊娠と同時に子育ての準備を始めているように、脳の中でも妊娠してから子どもの成長に合わせて、自分が育った家庭で育てられた頃の遠い記憶を、しまい込んであった倉庫の奥から引っ張り出して子育てをしているのです。だから、気づかないうちに子育てを学んでいたんですね。 私のメソッドでは生育歴(育っていく過程)で身につけた雛ひながた型(テンプレート)という言い方をします。それがよい雛型ばかりならいいのですが、不適切な雛型でもそれが正しいと無意識に思い込み、自分の子どもに対しても不適切な対応をしてしまいます。 でも、きちんと正しい子育てを学んでいないのですから、うまくいくほうが不思議です。最近、「つい子どもを怒りすぎてしまう」「イライラが止められない」と言うお母さんが増えていると感じています。 なかには、「子育て=怒るもの、イライラするもの」だと思い込んでいるお母さんもいました。でも、それもお母さんが悪いわけではありません。正しい子育てを学んでいないのですから当たり前です。
「まさかうちの子が」難関中学を退学して転校してくる生徒たち
そして話を聞けば聞くほど、お母さんも手探りで必死で子育てをしていることがわかり、心が痛くなります。お母さんが怒りを抑えられず怒ってしまうというのは、お母さん自身の心の成長が未発達なために、感情が抑えられないということもあります。 心の成長が未発達って、どんなことでしょう。 たとえば、以前、子どもが転んだときに手を地面につけないで顔から落ちてしまうということが話題になったことがありました。その原因は、ハイハイの時期にしっかりハイハイをさせずに歩かせたことによるものだったということがわかりました。体の成長に未発達な部分があったということですね。 ですから、今、子育てをしているお母さんたちは、「しっかりハイハイをさせましょう」と保健師さんからもアドバイスを受けているはずです。同じように、心にも発達段階があり、きちんと手順を踏まなければいけないのですが、大事な順番を飛び越してしまうと、そこが未発達になり、後から問題が出てくるのです。 冒頭の例のように、子どもの心の発達段階を理解して、お母さん自身の未発達な心の成長を育ててあげると、お母さんは怒らずに済み、子どもの問題行動も解決するケースが大半なのです。 私が通信制高校でスクールカウンセラーをしていたとき、せっかく難関中学に合格したのに不登校になって転校してくる生徒がたくさんいました。お母さんもお子さんが合格したときは、「私の子育ては正しかった」と思ったはずです。 そして、子どもが学校に行けなくなるなんて、まさか、こんなことになるなんて夢にも思わなかったはずです。正しい子育てを知らなかったばかりに、お母さんもお子さんも苦しい思いをしているのです。だからこそ、「心の発達」を知っておくことがますます重要なのだと、今こそお母さんたちに伝えたいとの思いを強くしました。