AED使用解禁20年 熊本市の使用率8%、広がらない要因は?
突然死の原因となる不整脈を起こした疾病者の心臓に電気ショックを与え、正常な状態に戻す自動体外式除細動器(AED)が、一般の人も使えるようになって20年が経過した。全国の学校や商業施設などへの設置が進んだ一方、必要な場面で実際に使われたケースはわずか。専門家は「普段から設置場所を確認し、どう行動するのか備えておく必要がある」と指摘する。 「あなたは119番、あなたはAEDをお願いします」。10月上旬、日本赤十字社熊本県支部が開いた救急法の講習会。市民ら20人が、心臓マッサージやAEDを使った心肺蘇生法を学んでいた。 ■専門知識は不要 AEDは、電極が付いたパッドを疾病者の胸に張ると自動で心臓の状態を判断。音声案内に従いボタンを押すだけの操作で、専門知識は不要だ。使用は医師や救急救命士などに限られていたが、2004年7月から一般市民にも解禁された。日本AED財団によると、全国で推計69万台が設置されている。
早期のAED措置により、1カ月後の生存率と社会復帰の可能性は格段に高まるという。ただ、総務省消防庁によると、22年に目撃された心肺停止の2万8834人に対し、蘇生が実施されたのは1万7068人。そのうちAEDの使用は、わずか4%の1229人だった。 県内も同様の傾向だ。熊本市には現在、小中学校など市有施設363カ所に576台が設置されている。商店街など民間施設でも設置は進むが、23年に市消防局管内で確認された心肺停止の1236人のうち、AEDの使用は8%の103人だった。 使用率が低い要因について財団は、設置場所などの情報が整理されていない点を挙げる。インターネットなどで公開されているAEDマップは自治体や民間からの申告などを基に作られており、網羅できていないという。施錠された建物内や関係者以外入れない場所に設置されているケースもあり、いつでも使用できる状況にないことが実施の妨げになっている可能性がある。