フェスの新定番アイテム「ブーニーハット」は、60年代のアメリカ軍がルーツだった?
「大人の名品図鑑」帽子編 #3 かつて帽子は日除けや防寒などの実用的な目的、あるいは社会における身分や階級の象徴として進化したが、いまやファッションアイテムとして、老若男女に愛用される装身具=アクセサリーだ。今回の「大人の名品図鑑」では、いま注目を集めるカジュアルな帽子について考察する。 ブーニーハット、サファリハット、ブッシュハット、アドベンチャーハットなど、タイプによって、あるいはブランドによって呼び方はさまざまあるが、トップが平らなバケット型のクラウンに幅広のつばを備えたミリタリーな帽子が、ここ数年人気を集めている。全周に日除けがあることから、顔だけでなく後方の首も太陽の日差しから守ってくれる実用的なデザイン。飛ばされないようにアゴ紐が付いるものも多く、釣りや登山などのアウトドアスポーツにも適している。アゴ紐を上で絞ってつばを丸め、カウボーイハットのようにも被ることも可能だ。その機能性の高さから最近では野外での音楽フェスティバルなどで被っている人も多い。もちろんアウトドアでのアクティビティだけでなく、街中でこの帽子をスタイリングに活用する人も増えている。 【画像多数】 独特のデザインをもつ「ブーニーハット」の全体像 これらの帽子のオリジナルとなったブーニーハットは、熱帯の森林地帯やジャングル向けに軍用に開発されたものと言われ、1960年代にアメリカ軍に採用されたものだ。軍用のモデルはクラウンの外周にリボン状の帯が縫い付けられたものがほとんどで、これは「ブランチループ」と呼ばれ、枝や葉などをループに刺して、被る人をカモフラージュしていたという。 多くの兵士たちは戦闘時にヘルメットを被っていたが、ヘルメットは重くて首が疲れる。自然界に存在しないヘルメットの丸い外観はかえって敵兵から発見されやすいとも言われていた。一方、ブーニーハットはシルエットが背景に溶け込むので偽装効果も高い。コンパクトに折り畳め、携帯しやすいということでこのブーニーハットは兵士たちから好評だった。ちなみに「ブーニー」とはタガログ語由来の言葉で、文化から離れた田舎や僻地を揶揄した表現とも言われている。 ブーニーハットを検索すると、ブーニーハットは米国式のつばの広いタイプを指し、つばが狭い同様の帽子は英国式で「ブッシュハット」と呼ばれていたと解説しているサイトもあった。しかし戦場もしくはその地域でミルスペック(軍が定めた規格基準)等を無視してつくられたローカルメイドのブーニーハットもたくさんあったらしいので、基本は同じでも細かいディテールが違う帽子があったことは容易に想像できる。現在でもアメリカだけでなく、世界中の軍隊でこのタイプの帽子が採用されている。