<春に挑む・関東一センバツへ>/中 意識の変化で頂点へ 先輩の言葉にありがたみ /東京
夏の東東京大会敗退後、新チームが始動した関東一は練習試合に明け暮れていた。米沢貴光監督は「今の代は投手が多く、例年より多めに練習試合を組んだ」と話す。前半は5試合連続で負けるなどチームとして未熟だった。 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 「公式戦無敗」を掲げているにもかかわらず負けが続くチームに、首脳陣は「練習試合で負けていたら、公式戦でも勝てないんじゃない?」と発破をかけた。そこから2年生を中心に意識が変わり、公式戦と同様に「絶対勝つぞ」など気合を入れて試合に臨むようになった。意識が変わると勝つ試合が増え、選手たちは勢いを取り戻していた。 そして迎えた秋季都大会。チームは本大会2回戦まで2桁安打を放ち快勝を続けていた。だが、3回戦は「負けてもおかしくない試合だった」(米沢監督)と言うほどの接戦だった。主将の高橋徹平(2年)は「それまでの試合で安打数が出ていたこともあって、自分たちは強いと勘違いしていた。自主練習の量も減っていた」と振り返る。 僅差で勝った後、それぞれが気を引き締め直した。自主練習の量も戻り、チームは東海大菅生、早稲田実と強豪を倒して決勝の舞台にたどり着いた。夏の都大会で悔し涙を流した坂本慎太郎(1年)も、早稲田実戦で3安打2打点をマークするなど調子が戻り、練習に来た3年生たちから「夏に打てよ」と笑顔で言われた。 先輩のありがたみを感じる場面は決勝でもあった。九回、優勝まであと1死という場面で、坂本は極度に緊張していた。プレッシャーで周りの声が聞こえないまま左翼を守っていると、中堅手の飛田優悟(2年)と目が合った。「ボール、捕るぞ!」――その言葉で冷静になれた。 優勝を決め、選手たちがマウンドに集まって喜ぶ中、記録員として選手を支えてきた田渕颯悟(りゅうご)(同)はベンチで首脳陣と固く握手を交わした。その後、高橋と抱き合うと、高橋から「お前の力もあったよ」と言われた。チーム一丸でつかんだセンバツ切符だった。 決勝後のインタビューで米沢監督は「まだまだ強くなるチャンスがある」と話した。全員、10日後に開幕する明治神宮大会を見据えていた。【小林遥】 〔多摩版〕