クーパー以上カントリーマン未満「MINIの新型」エースマン都市型を標榜する回答
エースマンのホイールベースは、4080mmの全長に対して2605mmと長め。それとともに、サスペンションシステムはうまく設定され、市街地でも高速でも乗り心地は、想像していた以上に快適だった。 カントリーマンでも感心したが、エースマンも当初、抱いていた若々しいイメージとは裏腹に、しっとりした大人っぽさがある。 以前のミニは、ハンドルを動かすと間髪入れずに車体が反応。それをゴーカートフィーリングと呼んでいたが、昨今はカーブで車体もそれなりに沈みこむし、“味”が少しソフト方向に変わってきている。エースマンも同様で、私はとても気に入った。
好きなところはもうひとつ。インテリアのデザインだ。ミニのデザインを統括してきたオリバー・ハイルマー氏が「フレッシュな感覚を演出したかった」と語ったとおり、ほかに並ぶプロダクトのないユニークなデザインになっている。 ステアリングホイールの向こうからメーターがなくなり、すべての表示がセンターの大きな丸いディスプレイに集約されたのは、カントリーマンなどと同じ。以前、記事にしたように「MINI・オペレーティングシステム9」が採用されている。
■ガジェット的な楽しさも魅力 私がとりわけ感心したのは、ダッシュボードとドアの内張りの質感で、これはうれしい驚きだった。リサイクルしたポリエステル素材を粗めに編んだような質感で、色が違うものを2層に重ねている。触った感覚もいい。加えて、ドライブモードに応じて色が変わる照明が組み合わされていて、車内にいるだけで楽しいのだ。 実際、クルマが走っていなくても、退屈することはない。音楽を聴くときには「DJデッキスクリーン」といって、円形モニターいっぱいにビニール盤が回っているような表示も選べる。
しかも、そのときビニール盤のアニメーションに指をあてて上下に動かすと、DJがコントローラーでスクラッチするような音が出るからおもしろい。これを上述のようなインテリアにいながらやっていると、時間がたつのを忘れる。 ガジェットと言ってしまえばそれまでだけれど、若い世代にもアピールしそうな仕掛けだ。デザイン、乗り味、そしてエンタテインメントと、凝りかたが徹底している。コンパクトなボディも、見方によれば、こういう特徴と合っている。「都市型のクルマ」というコンセプトを昇華させていったようなエースマン。興味深いモデルになった。
【写真】夜のイルミネーションも美しい「エースマン」インテリアも(46枚)
小川 フミオ :モータージャーナリスト