100均グッズで地震から自宅を守る…「家の中がメチャクチャで絶望」を回避する"耐震アイテム6選"
■「固定」するためのアイテムは100均で買える 「自宅の片づけって大掃除をイメージしているかと思うんですけど、どの部屋もぐちゃぐちゃで、ゴミ屋敷ですよ。この凄まじい惨状を見ると、大抵片づけの意欲や気力が失せます。 戸建ては瓦礫を外に出せるんですけど、マンションの場合は出す場所がない。エレベーターが止まっているので、非常階段で瓦礫を下に降ろさないといけなくなるんです。そこまで想定しないといけない。だから備えるんです」 辻さんが「固定」に使ったグッズは、滑り止めシート、転倒防止マット、開き戸ロックなどで、ほとんどが100円ショップで購入できる。中でも、滑り止めシートは棚の中や小型家電製品の下に敷きつめるだけで、物が落下したり飛び出したりしにくくなるおすすめのアイテムだ。 ■手を付けるのは高リスクのキッチンから 食器などの割れ物は、シートを中に敷いた収納ケースに入れて、滑り止めシートを敷いた棚にぴったりと隙間なく置くと、強度を増強できる。冷蔵庫内も同じやり方で、中の物が飛び出さないように固定する。このひと手間で被害を最小限にすることができる。 「地震に強い家」づくりに効果があるアイテムは図表1の通り。キッチンは、食器や刃物、ガラス瓶の調味料類など凶器となるものが多いので、最優先で対策を講じたほうがいいそうだ。
■防災グッズを買って満足してはいけない 「防災意識は東日本大震災から10年過ぎてもまったく進化していません。役所に備蓄がある。会社に社員用の防災ボックスが設置されている。防災バッグを家に用意している。それで大丈夫だと安心していませんか? 中身は何が入っていますか? 使い方を知っていますか?」 辻さんの問いかけに、「はい、万全です」と自信をもって答えられる人はどのくらいいるだろうか。 防災グッズを買い揃えて安心している、「防災15点セット」をそのままパッケージを開けずに新品の状態で保管している、自衛隊の使っている最強の防災品を用意しているなど、身に覚えのある話かもしれない。 被災地では、防災品の使い方がわからず使えなかったという話を辻さんは多く聞いてきた。 「災害用トイレを持っていても、4年経過すれば入っている凝固剤が湿気っていて使えないかもしれません。災害用トイレの使い方、わかりますか? 被災して冷静でいられない状況で、悠長に説明書を読んで試すなんてできますか?」 ■「我慢する」ではなく「心地いい」を目指す 地震が居住地付近で発生したとき、あるいは今年8月のように南海トラフ地震臨時情報が発表された際、防災バッグの中身を見直して初めて気づくのではないだろうか――保存食が消費期限切れだった、ラジオの乾電池が液だれしていた、ウエットティッシュが乾燥していたなど、いざというときに使い物にならない数々のグッズに。 「防災グッズを買い揃えることではなくて、今持っている物をどう使うかを考えることが重要なんです。使い方も知らない使ったこともない防災品で、ストレスフルな避難生活を何日我慢できるでしょうか。 自分が心地いいと感じる避難生活にするという発想に転換しましょう。水は大量に使えないけれど、いつも自分が使っている物をそのまま避難生活でも使えるように工夫すれば、我慢しないですみます。そのためには、在宅避難できる環境を平時から整えておく必要があるんです」 私たちは、防災グッズを揃えるのと同時に、防災の心構えを変える必要があるようだ。 (第2回に続く) ---------- 辻 直美(つじ・なおみ) 国際災害レスキューナース 一般社団法人育母塾代表理事。吹田市民病院勤務時代に阪神・淡路大震災で被災、実家が全壊する。その後赴任した聖路加国際病院救命救急部で地下鉄サリン事件の救命活動にあたり、本格的に災害医療活動を始める。東日本大震災や西日本豪雨などで救助を行う。現在はフリーランスのナースとして国内での講演、病院や企業や行政にむけて防災教育をメインに活動中。全面監修した防災リュックも販売している。著書に『レスキューナースが教える プチプラ防災』(扶桑社)など。 ----------
国際災害レスキューナース 辻 直美 聞き手・構成=ライター・中沢弘子