関東学院大→コロンビア院卒の小泉進次郎を学歴ロンダリング扱い…大学後の学び評価しない"無学"な日本人
■なぜ日本人は政治家の学歴を評価したがるのか 【安田】仮に、私立の中高一貫校に入る目的が「良い大学に進学するため」だとしましょう。もちろん、私立中学を選ぶ理由は、個性的な教育環境に惹かれるなど、さまざまな理由があると思います。でも、「大学進学を見据えた選択」というのは、受験のかなり大きな動機だと考えられますよね。特にエスカレーター式の学校だと、中学に入ればそのまま大学まで上がれる。これは確かに一見すると魅力的です。ただ、冷静に中学受験と大学受験の偏差値などを同じ学校で比べてみると、中学受験のほうが明らかに難しいんですよ。特に女子の場合は、親がエスカレーター式を好む傾向が強いためかなりのギャップです。そう考えると、「大学受験で入れるなら、わざわざ小学校時代の長い時間を費やして中学に入る必要はあるのか?」と私などは思ってしまうんです。結局、中学受験でそのレベルの学校に入れる学力があるなら、大学受験でもそれに近い学校に入れるはずですし、もっと短期間で結果が出るんじゃないかと。 【西田】客観的に見ると、日本には800校近くの大学があり、私立の中学校もほぼ同じ数あります。そのうち300校くらいが東京圏に集中していて、東京には1400万人の人口がいる。こうした規模感を考えれば、特に首都圏の中学受験の競争が過熱しているというのは簡単に理解できますけどね。 【安田】中学受験と社会の格差の関係にも目を向けたいところです。どんな受験でもある程度の格差は避けられないとは思いますが、特に私立中学に関しては、入学後の学費も高額ですし、家庭への負担は大きいですよね。 【西田】簡単に言えば、年間で最低でも100万円単位の費用がかかります。大学の年間授業料は国立で約55万円、私立で120万円くらい。中学からすでに私立大と同じくらいの額がかかり、さらに制服、カバン、タブレット、留学費用など、パンフレットには書かれていない出費も多い。驚きました(汗)。 【安田】そんなにかかるのですね(驚)。さらに塾など受験準備のための出費も。費用対効果を考えると、特に受験勉強をつらいと感じる子には、やはり無理をさせる必要はないのではと感じます。僕はゲーム感覚で受験勉強に取り組めるタイプでつらくなかったのですが、塾には苦しそうな子たちもたくさんいました。親として子供が本当にやりたいかどうかを確認し、つらそうであれば、機会費用の観点からも、やめさせてあげるのも一つの選択肢ですよね。 【西田】安田さんが普通に「受験はつらくなかった」と言い切れるのがすごいと思いますけどね。僕なんてつらくて仕方なかったですから。流石です(笑)。 【安田】ところで、ここまで話してきて浮かび上がるのは、「学歴」が大きな意味を持つ日本の社会構造の問題です。「どこの大学を卒業したか」が重要視される日本の学歴に対する捉え方が、中学受験の過熱の背景にある。 【西田】日本では大学の名前が社会に出た際の重要な指標になりがちです。一方で修士や博士といった高等教育への関心が極めて低く、この点がアメリカのみならず世界と大きく違う点です。 【安田】それは今日、僕が最も伝えたかったポイントでもあるんですよ。例えば、自民党の総裁選で、関東学院大学に付属小学校から上がった小泉進次郎さんが、コロンビア大学に留学したことを「学歴ロンダリングではないか」と捉える意見など、各候補者の学歴が話題になりました。そのとき、世の中で注目される切り口は「どの大学に行ったか」「留学先はどこか」といったものばかりでした。