全焼も「刀作り続ける」 県内唯一、津幡の松田さん工房
●火元、出入り口付近か 21日未明、石川県内で唯一、日本刀作りを続ける松田要(かなめ)さん(60)=津幡町浅田=の作業場「鍛刀場(たんとうじょう)」を全焼した火災で、津幡署と町消防本部は実況見分を行い、燃え方の激しい出入り口付近が火元との見方を強めた。焼損面積は約50平方メートルで、出火原因の特定には至らなかった。松田さんは北國新聞社の取材に「廃業は頭にない。一日も早く再建したい」と述べ、刀作りを続ける考えを示した。 【写真】火花を散らしながら鉄を鍛える松田さん=2023年1月、津幡町浅田 松田さんによると、鍛刀場は鉄骨造り平屋建てのプレハブで、築30年近く経過していた。火元とみられる出入り口付近には、水槽のポンプと椅子が置いてあった。 20日は鉄を溶かす普段通りの作業を行い、午後5時ごろに火を消して離れた。出火当時は無人だった。完成した刀は自宅に保管してあったため被害を免れたが、制作途中の数本が鍛刀場に置いてあったという。 火災は21日午前0時29分ごろに発生し、鍛刀場を全焼、約1時間10分後に消し止めた。松田さんは隣接する自宅にいて無事だった。同居する90代母にもけがはなかった。複数の住民が消防や警察に通報した。 ●「より良い刀を」 松田さんは山形の刀匠の下で修業し、33歳で津幡の実家近くに炉を開いた。約30年にわたり、松田恒治(つねはる)の刀工名で室町時代以前の古刀の再現を目指して鉄を打ち続けている。 2007年の能登半島地震で倒壊した土蔵の金具を譲り受け、刀の材料となる和鉄として使っていた。元日の地震で被災した能登島の知人からも、数日前に古い鉄をもらったばかりだった。松田さんは半年ほどで再建を目指すとし、「より良い刀を作れるよう頑張りたい」と前を向いた。