「不二家」と「シャトレーゼ」で分かれた明暗。“ペコちゃん色”を薄める“脱ファミリー戦略”にかかる期待
“アイス需要の急増”で嬉しい悲鳴
アイスクリームチェーンのB-Rサーティワンアイスクリームの業績も好調。2024年12月期の売上高は前期比17.7%増の291億円を計画中。実に4期連続の2桁増となる見込みです。 コロナ前の2019年12月期の売上高は194億円。5年ほどで100億円を上積みしました。アイス市場の好調な様子が伝わってきます。 シャトレーゼは2023年の酷暑で、アイスの欠品が続出。生産が追い付かない事態に追い込まれました。そのため、今年の冬はアイスクリーム工場をフル稼働させ、在庫を増やしました。2025年夏には九州にアイス工場を新設する計画を立てています。2021年もアイスの供給が追い付かなくなり、製造ラインを増設。生産能力を増強していました。 シャトレーゼは出店形態にも恵まれました。郊外のロードサイド型の店舗を出店していたため、巣ごもり需要を獲得することができたのです。
まるで「ゼンショー」のような動き
また、亀屋万年堂や冷凍菓子を販売する菜花堂(さいかどう)などを買収。デザートの総合企業となったことも急成長を後押ししています。 ロードサイド型の店舗に強みを持ち、提供する商品の種類を増やして顧客の間口を広げ、更にM&Aで業績拡大を続ける姿は、牛丼チェーン「すき家」を運営するゼンショーホールディングスと重なるところがあります。 しかし、郊外型の店舗という店においては、不二家のケーキショップも同じ。独立型のものだけでなく、「いなげや」「ヤオコー」「マルエツ」などのスーパー併設型の店舗も多く展開しています。スーパーマーケットはコロナ禍による巣ごもり特需の恩恵を受けました。 それにも関わらず、不二家は売上高を伸ばすことができていないのです。
「普遍性」と「立地特性」が噛み合い、好調を維持
まず、ケーキ市場そのものの停滞感があるでしょう。先ほどの矢野経済研究所の調査では、2023年のデザート市場は4.3%伸びるという予測でした。これにアイスクリームの市場を加味してそれ以外(洋菓子・和菓子など)の伸びを算出すると、2.5%ほどとなります。 また、不二家はファミリー層が主要なターゲットであり、少子化が深刻化する日本においては不利。ハレの日需要など利用シーンも限定されてしまいます。 不二家は2023年9月にロゴを一新し、「ペコちゃん」のトレードマークである、舌をモチーフにしたデザインを採用しました。ファミリー層に親しまれた“ペコちゃん色”を薄めており、ブランドイメージの刷新を図っています。 最近では焼き菓子に力を入れており、バウムクーヘンが売れ筋商品の仲間入りを果たしました。不二家は、2007年に発覚した期限切れ牛乳使用問題でブランドイメージが激しく毀損。そこからは回復したものの、現在は新たな壁に直面しています。 トップスの強さを支えているのは、どの世代にも愛されるケーキを提供しているため。昔ながらの手作りにこだわり、飾り気がなくシンプル。クルミのアクセントなど、飽きさせない工夫も加えられています。 この普遍性が最大の強み。トップスは大丸や高島屋、伊勢丹など都市部の百貨店を中心に出店しており、お土産需要の獲得ができます。世代を問わずに好まれやすいため、“外さない”お土産に最適なのです。 <TEXT/不破聡> 【不破聡】 フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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