なぜ競合が追従できない? “スクープ”一強の「週刊文春」、元記者に聞くマスメディアが抱える課題とは
■「取材は投資」 事実を突き止めるために人員と取材費を惜しまない風土
「例えばある事件が発生して取材をする際、それが地方や海外などだと何日も何人も記者を大量投入するというのは、ほとんどの編集部の場合予算的に厳しい。でも少なくとも僕が『文春』在籍時は惜しまず何人も記者が押し寄せローラー取材をかけていく。取材費用は“投資”であるという風土があり、いいネタが取れることで売上につながり、それが取材費につながるという良いサイクルで回っていた印象はあります」(甚野氏) 「あと僕は元々『フライデー』にいたのでその感覚で話しますと、出版社系の週刊誌ではアンカー制を取っていることが多い。記者はデータマンでライターや編集者がアンカーとして記事をまとめる。ですが『文春』は記者が記事を書いています。自分が記事を書くからどうしても、これは下手なことは書けないぞと取材にも多大なる責任を感じる。逆に分業制だと責任も分散してしまう弱みはあるかもしれません」(赤石氏) 『文春』は社員と専属契約のフリーランスの混合体で取材チームを組んでいる。元々、他社でエース記者だった人が移籍してくることが多く、キャリアのあるフリーランスが多く集まる環境だったのも幸いしているかもしれない。一時期は『フライデー』出身者が1/3を占めていたこともあり、そのパパラッチ的ノウハウを取り込み、成長を遂げた経緯があるという。 取材手法は記者によって様々ではあるが、昨今あらためて話題になるのが、情報提供者へのケアをどのようにしているのかという点。情報提供すると数十万の報酬があるという噂もあるが、『文春』では経費以外の報酬は原則渡さないという。「情報をいくらで買ってくれるか?」と聞かれても、支払うことはできません。報酬を出してしまうと、報酬目的で嘘の情報が集まりやすくなってしまうからです」と赤石氏。 「タレコミばかりを追い求めていても、結局良いネタはとれない。それよりも、足で動いてリアルで色々な人と会い、自身のパーソナルを気に入ってもらう。人間関係を長く築いていくことが、情報提供者やキーマンとなる人との関係性につながります」(赤石氏)