小泉進次郎と東出昌大の“危険な共通点”とは 悪ふざけで「進次郎構文」を面白がったSNSの功罪
「政治家として不安」と言われ続けて15年 SNS時代の「進次郎構文」人気が与えてしまった自信
パフォーマンスは華やかだが、政治家としての資質には不安が残る。進次郎氏はずっとそう言われ続けてきた。もしかするとそうした批判に対する自己防衛が、質問に答えているようで答えていない「進次郎構文」を生み出したのかもしれない。 結婚会見の時、政治の世界は戦場でよろいが脱げない、と表現していたが、のらりくらりとした「進次郎構文」には言質を取られまいとする保身の匂いもうかがえる。2021年のニュース番組では、温室効果ガスの削減目標を46%に設定した根拠を問われるも「おぼろげながら浮かんできたんです。46という数字が。シルエットが浮かんできた」と答えてキャスターをあぜんとさせていた。 またイクメンとしても有名な進次郎氏だが、かといってよその子どもにまで優しいわけではないようだ。2022年の「気候変動対策エコフォーラム」で、会場にいた子どもからの質問にちゃんと答えていないと話題になったことも。貧困をどうしたら無くせるのかと聞かれたものの、「どうして貧困について考えるようになったの?」と質問で返すにとどめ交流を楽しんだとする様子に、呆れたといった声も上がった。 人からの質問には答えず、かといって本音や信条を明かすわけでもない。一見誰にでもにこやかに対応している進次郎氏の、「聞き流す力」はすごい。けれどもその空虚なやりとりがSNSでブレイクしてしまったがために、進次郎氏は自分の対応に自信を持ってしまったのかもしれない。その鈍感さははからずも、「頭は悪いが人は悪いわけではない」という無邪気な印象を与えたのではないか。ともすると、小事にとらわれない大人物として、次期総理にと担ぎ上げる材料にさえなったように見えるのである。
実は庶民に冷淡? 困ったら主語を大きくする「チーム進次郎」は成立するか
総裁選出馬にあたって、「誰もが自分らしい生き方のできる国づくり」と語る進次郎氏だが、裏を返せば「全部自己判断・自己責任でよろしくね」と突き放す冷淡さもにじむ。解雇規制の見直しは働く人の生きがいと賃上げにつながると言うが、果たしてそんなにうまくいくものだろうか。選択制夫婦別姓だって、法改正もセットでないと公的手続きや税金の公的優遇の場面でデメリットを被ることがある。 環境大臣時代、進次郎氏は答えに窮すると「われわれが」「政府として」「日本にとって」と主語を大きくすることがよくあった。今回も自身の政治経験の未熟さを指摘されると、経験不足をチームワークでカバーすると切り返している。それは正しい対応だが、自分の至らなさは他者に守ってもらいつつ、国民にはまず自助努力を求める考え方はちょっと怖いと思うのだ。 経験者の手を借りたいと言う一方、国民の信頼を取り戻すため政治改革に取り組むと語る進次郎氏。なるほど「聞く力」と繰り返してきた岸田政権を刷新するには、「聞き流す力」が大いに役立つ局面もあるだろう。一方で、いつなんどき、「数字が浮かんできたから消費税46%」と言い出すか分からない。そんな進次郎氏が総裁になるかもしれないってことは、総理になるかもしれないってことです。なぜだろう、進次郎構文なのに、笑えない。
冨士海ネコ(ライター) デイリー新潮編集部
新潮社