【ジャパンC】天皇賞(秋)、ジャパンC連勝は4頭のみ 連勝馬の足跡を振り返りイクイノックスの可能性を探る
史上5頭目の偉業に挑むイクイノックス
今週末は、GⅠジャパンCが東京競馬場で開催される。なんといっても注目は世界最強馬イクイノックスと、牝馬3冠馬リバティアイランドの直接対決。東京2400mというチャンピオンコースで行われる頂上決戦は歴史的一戦となりそうだ。 【ジャパンカップ2023 注目馬】脚質、展開問わず力を発揮、能力は断トツのNo.1! SPAIA編集部の注目馬を紹介(SPAIA) 今回、イクイノックスは天皇賞(秋)→ジャパンC連勝に挑む。天皇賞(秋)を世界レコードの1:55.2で駆け抜けた反動、そしてキャリア初の中3週を乗り越えられるかに注目が集まっている。 これまでに天皇賞(秋)→ジャパンCを連勝したのは、スペシャルウィーク、テイエムオペラオー、ゼンノロブロイ、アーモンドアイの4頭のみ。イクイノックスの父キタサンブラックも極悪馬場の天皇賞(秋)を制したが、その後のジャパンCでは3着に惜敗。この連勝がいかにタフで困難なのかが分かる。 本記事ではまずこの偉業を達成した4頭の足跡を辿り、その後にデータを用いてイクイノックスの天皇賞(秋)→ジャパンC連勝の可能性を検討していく。
天皇賞(秋)→ジャパンC連勝を果たした名馬たち
最初に天皇賞(秋)→ジャパンCの連勝を達成したのはスペシャルウィーク。競馬界の生きる伝説・武豊騎手に初ダービー制覇をプレゼントした名馬である。1999年秋、スペシャルウィークは始動戦にGⅡ京都大賞典を選択。レースはスローペースを先行するも、最後の直線では全く伸びず10頭中7着と大敗を喫してしまう。本番の天皇賞(秋)はこの大敗と陣営の弱気なコメント、当日馬体重-16kgが重なり、キャリア最低の4番人気だった。 スペシャルウィークはレースが始まると前走とうってかわって馬群の後方を追走。4コーナーで外を回し直線に突入すると、末脚が爆発。前にいた11頭をまとめて差し切った。走破時計1:58.0はレコード、史上2頭目の天皇賞・春秋連覇を達成した。 次走が前年にエルコンドルパサーの3着に敗れていたジャパンC。この年は同馬を凱旋門賞で破ったモンジューを筆頭に5ヶ国のダービー馬ら、超豪華メンバーが秋の東京に集結した。 1番人気こそモンジューに譲ったが、スペシャルウィークは「日本総大将」としてこのジャパンCに臨んだ。序盤は天皇賞(秋)と同様に、平均ペースを後方馬群で追走。4コーナー手前で徐々に位置を上げ、6番手で最後の直線へ。持ち前の末脚が今回も炸裂し、残り200mで先頭に立った。その後は後続を寄せつけることなく、1.1/2馬身差で完勝。武豊騎手はこれが初のジャパンC制覇だった。 この後の有馬記念ではグラスワンダーの2着に敗れ、秋古馬三冠は未達成に終わったものの、まさに「王道を歩み続ける強さ」を体現した名馬であったといえるだろう。 続いて連勝を達成したのがテイエムオペラオー。古馬王道路線で年間無敗を達成した名馬だ。2000年秋の始動戦に選んだGⅡ京都大賞典を勝利し重賞5連勝を達成。天皇賞(秋)でも大本命...と思いきや鞍上の和田竜二騎手が東京競馬場で未勝利だったことや、同レースで1番人気が12連敗中の「1番人気の呪い」なども手伝って、1番人気ではあったものの単勝オッズは2.4倍もついた。 レースはロードブレーブとミヤギロドリゴが後続を離して逃げるなか、好位を確保。最後の直線に突入するとグングンとポジションを上げていき、先に抜け出したメイショウドトウをあっという間に捉えた。「1番人気の呪い」も何のその、終わってみれば2.1/2馬身差の完勝だった。 テイエムオペラオーの勢いは止まらず、次走ジャパンCでは当時のレース史上最高の単勝支持率50.5%を記録した。実際のレースも完璧な横綱競馬。序盤は馬群の中団で競馬を進め、最後の直線で一気に進出開始。またも先に抜け出していたメイショウドトウをきっちり捉え、ゴドルフィンからの刺客・ファンタスティックライトらの猛追もねじ伏せた。着差こそクビ差であったが、着差以上に強い内容だった。この連勝により「オペラオー包囲網」が形成され、今でも語り草となっている2000年有馬記念へと繋がっていく。 次は、テイエムオペラオーに続いて史上2頭目の秋古馬3冠を達成したゼンノロブロイ。4歳春までは、ダービー2着、有馬記念3着、天皇賞(春)2着と、GⅠでは善戦するも勝ち切れないという歯痒い競馬を続けていた。そんなゼンノロブロイの運命は、世界の名手O.ペリエの手綱捌きに導かれ一変した。4歳秋始動戦のGⅡ京都大賞典を2着とし、次走の天皇賞(秋)では同騎手と昨年菊花賞以来のコンビを組むこととなった。 レースは春からの安定感を買われ1番人気に推されたものの、単勝オッズは3.4倍と押し出された形。これまで前目の競馬で結果を残してきた同馬だったが、ペリエ騎手はなんと後方からの競馬を選択。ただこの戦略が大成功し、最後の直線では上がり最速の末脚を繰り出し、前目で粘るダンスインザムードを豪快に差し切った。 勝った勢いそのままに、続くジャパンCも単勝オッズ2.7倍の1番人気に支持された。スタートすると中団前目で競馬を進め、残り200mでは堂々の先頭。後続との差はグングン離れてゆき、2着コスモバルクに3馬身差をつける完勝。東京2400mはダービーでネオユニヴァースの2着に敗れた舞台。ペリエ騎手もジャパンCでは、2002~03年とシンボリクリスエスで2年連続3着に敗れており、人馬ともに嬉しい勝利となった。この勢いは暮れの中山まで止まらず、続く有馬記念はレコード制覇。見事に秋古馬3冠を達成した。 そして、直近で天皇賞(秋)→ジャパンC連勝を達成したのがGⅠ・9勝馬のアーモンドアイ。連覇&JRA史上最多のGⅠ・8勝目がかかった2020年天皇賞(秋)では、単勝1.4倍の圧倒的支持を集めた。道中は3番手で進め、最後の直線では持ったままの手応えで先頭へ。残り200mでルメール騎手の鞭が入りトップギアに入ると、クロノジェネシス、フィエールマンというサンデーRの2頭の猛追を抑え、歴史を塗り替える勝利を挙げた。勝利騎手インタビューではルメール騎手の目に涙が浮かぶシーンも。この1勝が如何に重い1勝だったのかを象徴する名場面だった。 そして陣営がラストランの舞台に選んだのがジャパンC。コントレイル、デアリングタクトの無敗3冠馬2頭含めた、3冠馬3頭による世紀の一戦となった。アーモンドアイは単勝2.2倍の1番人気。レースはキセキが大逃げを打つなか、これまで通りの先行策をルメールは選択した。 デアリングタクト、コントレイルより前のポジションで最後の直線を迎えるが、逃げるキセキとは約20馬身ほどの差があった。ルメール騎手の左鞭が入るとアーモンドアイのギアは全開に。あっという間にキセキを捉え先頭に立つと、デアリングタクトとコントレイルを全く寄せ付けず1.1/4馬身差でゴール板を駆け抜けた。無敗3冠馬2頭に土をつけ、最強馬は最強馬のままターフに別れを告げた。