完成度が高すぎる…歴代相棒にはない亀山薫の成長とは? 『相棒 season23』第3話考察&解説レビュー
毎週水曜夜9時より放送中のドラマ『相棒 season23』(テレビ朝日系)。国民的人気を誇るご長寿刑事ドラマの“黄金コンビ” が帰ってきた! 杉下右京(水谷豊)×亀山薫(寺脇康文)が、共に事件を追う。さっそく、第3話の内容を振り返っていこう。(文・Naoki)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】 【写真】寺脇康文“亀山”の活躍が光る…貴重な未公開写真はこちら。ドラマ『相棒 season23』劇中カット一覧
ミステリーとしての完成度が高かった第3話
杉下右京「当たり前になると有り難みは忘れてしまうもの。偶には離れてみるのも良いかもしれませんね」 場所ではなく人や時間が大事である。 そう思わせてくれたのはseason23 第3話「楽園」だ。 本作は亀山が休暇中に右京が単身で殺人事件の犯人を追い、通信手段が限られた宿泊施設で怪しげな従業員や宿泊客達と腹の探り合いをする王道のミステリーである。 しかし単純なミステリーとは違い、凄腕ハッカー”バジリスク”や顔も本名も不明の大物半グレである”鮫島”の因縁にも繋がる一筋縄ではいかないエピソードも語られた。 まずはミステリーとしての完成度だが、これが驚くほど高い。
サブキャラクターが活きている
従業員は意味深で、親は倉庫の写真を撮り、若いカップルは何かを森に埋め、小説家と編集者は、使いもしない大量の氷を確保するなど怪しい人物しか出てこない。 また看板が炎上したり、停電中に従業員が姿を消すなどヒヤヒヤさせる要素も盛り沢山だ。 オーナーの正体は”バジリスク”、従業員は”鮫島”に追われる被害者、仲睦まじい親子も実は潜入捜査官、カップルは実は”鮫島”の部下、小説家は”鮫島”の母親、編集は小説家に利用された駒であった。 しかも全員が自分の役職に甘んじず、個性あるキャラクターとして活き活きと描かれているのが良い。 ミステリーはトリックや物語の筋も大事だが、サブキャラクターが活きているからこそ杉下右京という極上の名探偵の活躍がより輝いて見えるのである。
着実に成長する亀山薫
本作は人間ドラマとしても面白かった。 田舎から逃げ、都会にも馴染めずネット世界に閉じこもった経験から「この世に”楽園”なんて無い」と自嘲する樫村が、古瀬と綾乃という親友2人と過ごす日々こそが”楽園”であったと気付くのがグッとくる。 またそんな彼が綾乃を守るために、命懸けで恐ろしい半グレに挑む姿が素直にカッコいい。 更に本物の鮫島である田村と綾乃や、殺された古瀬にも共通点があるのも興味深い。 彼等は全員幼少期に親から捨てられていたのだった。田村は道を踏み外し、母と再会できてもなお女性に固執するようになった。一方で綾乃や古瀬は、仲間想いの真っ直ぐな人間として育った。 さらに本作では、亀山薫の成長も見て取れた。 右京が捜査に関わっている事を知って休日返上で捜査に赴いたのは良いが、連絡が取れずに彼の思考を逆算してどこにいるかを見事に予測してみせた。 これはかなり凄い。右京と相棒が別々に捜査する話自体は珍しくない。しかし、その際は、最初は右京と一緒に行動していたり、彼から明確なヒントを与えられ、その言葉に誘導されながら突き進んでいくパターンが多かった。 実際に神戸、カイト、冠城もその手の話が基本的に多い。 しかし今回は休暇中ということで右京も遠慮したのか、亀山へ手掛かりを残す前提で動いていない。実際に何度も手掛かりが途絶えるポイントはあったが、亀山は右京と長年一緒に過ごしてきた経験則で難局を乗り切っている。 また、亀山が右京の足跡を追う場面を見せることで謎めいた事件の全体像も分かるなど、脚本にも趣向が凝らされている。そして場が温まりきったタイミングで亀山は右京を救うのである。 スマホも”相棒”も無くなって初めて有り難みが分かるもの。樫村も友人との時間を失い初めて有り難みを理解した。 筆者は『相棒』を観ている時間が”楽園”だと考えている。掛け替えのない時間を大切にするような気持ちで今後も視聴していきたいと思う。 【著者プロフィール:Naoki】 1995年生まれのエンタメ企業勤務。ドラマ、漫画、ゲームなどサブカルをこよなく愛するオタクライター。自身でも作品ファンを集めたオフ会を開いたり積極的にファンコミュニティを拡大させている。記事は知らない人には分かりやすく、知ってる人にはより楽しめるを信条に活動中。
Naoki