絵巻物を拡大すると武将から鼻血 関大と林原美術館が発見
美術作品をまちなかや商店街へ
40倍ズームの威力は迫力十分。源平合戦の主力武器は弓だったが、戦闘シーン以外では、相手を威嚇する弦(つる)を張った弓と、弦を外して戦闘能力をなくした弓が、場面に応じて描き分けられていることが、画像を拡大することで判明した。 壇ノ浦の合戦で勝利した源氏方が三種の神器をおさめた箱をのぞく場面で、武将の鼻から噴き出すふた筋の鼻血まで克明に描き込まれていることも、拡大画像で確認。三種の神器の影響で源氏方が鼻血を流したとする平家物語の語り物の世界に沿って、絵巻物が忠実に制作されていた事実が、改めて浮き彫りになった。 林原美術館の長瀬代表理事は「関大の協力を得て、絵巻物や掛軸、屏風絵などのデジタル画像化を進めていきたい」と抱負を語った。関大社会学部の与謝野有紀(ありのり)教授は「超高精細デジタル画像化された美術作品をまちなかに持ち出して、市民がふれあえる機会を作っていく。今年中には平家物語絵巻を商店街で公開したい」と意気込んだ。 超高精細デジタル画像化された美術作品は調査研究に活用されるほか、展覧会場で入場者がパソコンで自由に拡大して鑑賞できる。展示作品をガラス越しにながめる従来の展覧会と比べると、作品の与えるインパクトが強い。 林原美術館でひと足先に開催中の「平家物語展」が好評を得ている。超高精細デジタル画像化作品は、今後の展覧会の運営やまちとアートのかかわり方にも、新風を吹き込みそうだ。 (文責・岡村雅之/関西ライター名鑑)