絵巻物を拡大すると武将から鼻血 関大と林原美術館が発見
絵巻物を拡大すると武将から鼻血 関大と林原美術館が発見 THE PAGE大阪
絵巻物を拡大すると、武将の鼻血までバッチリ見えた──。関西大学(大阪府吹田市)と林原美術館(岡山市)が、超高精細デジタル画像化技術で美術作品の鑑賞機会を創生するために連携協力することで合意し、吹田市の関大千里山キャンパスでこのほど、協定調印式が行われた。絵巻物などの絵柄を40倍に拡大することで、新しい発見が可能になったほか、展覧会場のパソコンで市民が作品画像を自由に拡大して鑑賞できるため、美術展示にも新風を吹き込みそうだ。
平家物語絵巻を40倍ズームで鑑賞
調印式には関大から楠見晴重学長、林原美術館から長瀬玲二代表理事らが出席。調印文書に署名して文書を取り交わした。楠見学長は「超高精細デジタル画像化技術による画像は、これまで確認できなかった微細な部分を大きく鮮明に見ることができ、新たな研究を進められるメリットがある。本学は社会連携を重視しており、岡山の皆さんと連携し、地域課題の解決や地域文化の醸成に貢献できるものと喜んでいる」と語った。 長瀬代表理事は超高精細デジタル画像化技術の利点を3点指摘。「第1に今の姿を画像に留め、経年劣化時の修復などに備えられる。 第2に作品展示や美術教育の広がりを作り出せる。第3に細部まで鑑賞できるため深く研究するための手かがりを得られる。関大のさまざまな知見や知恵をお借りし、当美術館の美術品を社会に還元していきたい」と話した。
全長33メートルの絵巻画像を前後にすばやく移動
関大は最新鋭の超高精細デジタル画像化技術を駆使し、地域文化や芸術資源をデジタル画像に取り込むことで、市民の鑑賞機会を創生する研究プロジェクトを推進中。大阪研究の深掘りと併せて、大阪と地域のかかわりも研究テーマとして重視している。 林原美術館は岡山市最古の美術館。国宝3件、重要文化財26件を含む約1万件のコレクションを誇る半面、美術館が狭いため、展示点数を制限せざるを得ない課題を抱えていた。 大阪と岡山が江戸期の絵画制作などで深く結びついていたことなどから、関西を代表する総合大学と中国地方有数の美術館の連携協定が、地域を越えて実現した。芸術系大学以外の大学と美術館が提携するのは、全国的にも珍しい。 会場では林原美術館所蔵で江戸初期に描かれた「平家物語絵巻」の超高精細デジタル画像を映し出しながら、超高精細デジタル画像化技術の特色などが説明された。画像を40倍に拡大しても、鮮明さは衰えない。 パソコンを操作すると、大型プロジェクターに映し出された絵巻の画面がクローブアップされ、細部が鮮明に浮かび上がる。実際の長さが33メートルに達する細長い絵巻の絵柄が、パソコン操作ひとつでぐんぐん移動するのも新鮮な体験だ。