「紫の上」はまひろ?『源氏物語』の思わぬ裏話…中宮・彰子がダメ出しした理由も推測【光る君へ】
源俊賢の「父を思い出した」エピソード、実は…
ただこの物語によって、彰子は男性・・・ないしは人間という存在について、おそらく生まれて初めて疑問を感じることになっただろう。そのタイミングで、父・道長が明るく笑う姿を初めて見る&まひろの「殿御は皆かわいいものでございます」発言を聞いたことで、ずっと硬い蕾のように大人に心を閉ざしていた彰子が、ここから少しずつ花開いていくようになるのも納得がいく。とりわけ、多分好意を持っているはずだけど、畏れ多さもあってなにも言えなかった天皇への接し方も、ここから変化していくのだろう。 ちなみに、彰子の心を動かすことになった、中年男性たちの「雨夜の品定め」(昼だけど)の会話のとき、道長の義兄・源俊賢(本田大輔)が、光る君について「父を思い出した」とまひろに話していた。実際俊賢の父・高明は、光る君のモデルと言われている人物の一人。その逸話をこういう形でさり気なく出して来るのが、にくい脚本だ。
まひろの経験は反映される? 次週も盛りだくさんな予感
そしてまひろは、第1話の道長と自分の出会いが描かれた檜扇を見て、「もし道長の妾となっていたら、どんな人生だったのか」を想像。そこから「紫の上」が初登場し、藤壺と光る君が不義の子を成すという怒涛の帖『若紫』が誕生することになる。第1話の2人の出会いを、視聴者は「『若紫』のようだ」と盛り上がっていたが、まさか紫の上がまひろの「もしも・・・」の姿そのものだったとは、そこまでは考えていなかった。 そう考えると、光る君に心から愛されるけど、一方で彼がほかの女の元にも通って子をなすことに戸惑い、身分的に正妻にはなれないことに打ちのめされるという紫の上の姿は、確かにまひろが道長の妾になっていたら、そういう苦労を背負っていたであろうことが想像できる。 となると同じ帖のなかにある、藤壺の不義の子の懐妊も、まひろの経験が反映されるということだろうか? 次週は彰子が天皇に大胆な告白をするようなので、どうしてもそっちの方に気持ちが持っていかれてしまうだろうが、これを読んだときの編集者・道長の反応も、まぎれもなく注目だろう。 ◇ なお、NHKのドキュメンタリー番組『100カメ』では、9月12日放送回で『光る君へ』の現場を取り上げる。俳優たちの素顔に触れるだけでなく、今回登場した「曲水の宴」の設営の様子もじっくり見せてくれるようなので、是非チェックしておきたい。時間は夜7時30分~8時15分。 『光る君へ』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。9月15日放送の第35回「中宮の涙」では、金峯神社まで御岳詣(みたけもうで)に参った道長に危機が訪れるところと、まひろの書いた物語によって、天皇と彰子の関係が大きく変わっていく様が描かれる。 文/吉永美和子