トランプ前米大統領

（ブルームバーグ）： トランプ前米大統領は人工妊娠中絶についてこれまで、各州に対応を任せるのが最善だと述べていたほか、共和党のメッセージ発信に不満を表明し、共和党大統領候補の指名受諾演説では言及を避けてきた。

だが今、女性のリプロダクティブ・ライツ（性と生殖に関する権利）のリーダーとして自身を新たに位置付けようとしている。こうした転換は有権者を取り込むための不誠実な策略だと主張する民主党と、自分たちは見捨てられたと考える一部のトランプ氏支持者から怒りを買っている。

ここ数日、トランプ氏は自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に、自分の政権が誕生すれば「女性とリプロダクティブ・ライツにとって素晴らしいものになる」と投稿。避妊薬の郵送を禁止する150年前の法律を施行しないと表明した。共和党副大統領候補のバンス上院議員も、中絶を禁止する法案が連邦議会で可決されても、トランプ氏は「間違いなく」拒否権を行使するだろうと述べた。

トランプ氏がハリス氏攻撃、ほぼ言及避けてきた妊娠中絶問題で

こうした発言の背景には、共和党が長年擁護してきたリプロダクティブ・ライツ制限について、11月大統領選で激戦が予想される州の有権者を遠ざけずにどのように語るべきかトランプ氏らが苦慮していることがある。

同氏は今月、医療的な中絶に使われる経口中絶薬ミフェプリストンの入手制限に前向きだと述べていた。

トランプ陣営の広報担当カロリン・リービット氏は声明で、前大統領は 「人工妊娠中絶について各州が決定する権利を長い間一貫して支持しており、ホワイトハウスに戻っても連邦の禁止法案に署名することはないと明言している 」と指摘。また、トランプ氏は「避妊薬への一般的なアクセス」と体外受精も支持していると付け加えた。

トランプ氏は現在自身が陥っている板挟み状態を生み出すことに手を貸した経緯がある。自身が指名した連邦最高裁の保守派判事らは2022年、人工妊娠中絶の権利を認めた「ロー対ウェイド判決」を覆した。