世界に羽ばたく日本の豪華棺桶 ── 故人を悼む気持ちを輸出する
この世に生を受けたすべての人にとって「死」はたった一度の経験だ。そして、死んで必ずと言っていいほどおさまる場所がある。棺桶(かんおけ)だ。しかし、火葬率が99.9パーセントを超えるこの日本で、棺桶は燃えて灰になる。そこに、あなたはどれだけのお金をかけられるか? 海外展開を視野に入れる棺桶業者を取材した。
華道家・假屋崎さんプロデュースの豪華な棺桶
広島県府中市に本社を置く棺桶製造で国内大手の「日本コフィン」(平山八広社長)が1月28日、東京都内にある華道家・假屋崎省吾さんの自宅サロンで、ちょっと変わった棺桶を発表した。假屋崎さんがプロデュースした高級棺桶「花筐(はながたみ)」だ。棺桶の平均価格は約10万円といわれるが、花筐の価格は相場の3倍もする30万円。 假屋崎さんがプロデュースしたということもあり、色とりどりの美しい花が描かれた布で飾られている。どこか着物のような雰囲気もあって、見るからに豪華だ。假屋崎さんは「まだまだ死にたくない」と棺桶に入りながらもにっこり。自身がプロデュースした“製品”だけに満悦そうだった。「母のおなかに逆戻りしたような、包まれた感覚です」とも話し、自分用に予約したという。
経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」によると、葬儀業の売上高、取り扱い件数、従業者数はともに右肩上がりで、2000年の2630億円と2013年の5980億円を比べると売上高は倍増している。その一方で、経済的理由や地縁関係に基づくコミュニティーの弱体化、少子化、核家族化が進んでいるという。ある仏壇仏具のメーカーは、家族葬や直葬といった葬儀・埋葬の小規模化が起きている話し、「エンドユーザーの予算感が減っている」と明かした。 つまり、ビジネスとして割りきって見るならば、死亡者数は増えるが、その単価が減少しているということだ。花筐のような高級棺桶は、そうした社会に対応した“製品”なわけだが、いずれ人口分布のバランスが大きく変わり、人口も減少するだろう。企業としては、20~30年後を見据えた戦略を練る必要がある。同社が視野に入れているのは海外展開だ。