「地面師」が”なりすまし役”を手配してくる場所はまさかの…警察組織を翻弄する「地面師たち」の衝撃的なノウハウ
拘留中の男に書いた質問状
〈まだまだ言い足りない。このままでは闇の中!悔しさ晴らして下さい。 宮田〉 2018年7月5日付で東京拘置所から私宛にこんな電報が届いた。差出人の〈宮田〉とは、東向島や赤坂のアパ事件で逮捕・起訴された宮田康徳である。あるルートを通じて勾留中、「話したいことがある」と連絡をもらい、質問状を送ったところ、届いた電報だ。 私が宮田宛に書いたその質問状の一部概要を記す。 〈東向島事件の流れについて。吉村清子さんと医師の贈与話をどのようにして知ったのか。そこに乗じた経緯は〉 〈なぜ内田は多くの事件にかかわっているのか〉 〈東向島やアパ事件、新橋の白骨死体事件で手配師の秋葉はなぜ不起訴になったのか〉 〈アパ事件はどのようにして仕組まれたのか。中間業者のクレオス白根はなぜ不起訴になったのか〉 〈積水ハウス事件はどのようにして仕組まれたのか〉 7月初め、そんな質問を宮田に投げた。折しも、積水ハウスの捜査が本格化し始めていた時期にあたる。9月に入り、同じルートを通じてその返事がようやく届いた。たとえば東向島の件については、ざっと次のような返答をしてきた。
融資詐欺の一種「逆ザヤ」
「はじめ吉村さんと医師の贈与話は、内田マイクと高橋利久が中心になって動いていました。高橋の子分から私の友人に話が持ち込まれ、(司法書士の)亀野に相談したところ『内田も高橋も有名な地面師だから、こっちで話を奪ってしまおう』となった。内田と高橋に1650万円を渡してこの話を乗っ取ったわけです」 やはり内田が事件の企画・立案者となっているようだ。高橋はかつて「総武線グループ」の頭目として名を馳せた。おまけにここには、北田も一枚噛んでいて事件後に300万円を渡したのだとか。宮田の回答は続く。 「亀野は大学を中退してディズニーランドで働き、司法書士になる前には千葉の建売業者の営業マンをしていました。地面師が本業で10年以上やっています。地面師仲間で亀野といちばん仲のいいのが北田でした。それで町田署の事件も2人のコンビでやりだした。亀野は『北さん、“逆ザヤ”はもう古いよ!これからは“なんちゃって(なりすましのこと)”だよ』と教えてあげていました。亀野は権利書などの偽造もこなす。用紙だけでなくホッチキスの留め金まで古く見せる方法を知っています。もう一人の内田はどちらもできるオールマイティです」 ここでいう“逆ザヤ”とは北田が編み出した一種の融資詐欺だ。たとえば1億円の価値のある土地に対して3000万円の手付金を持ち主に支払い、そのあと金融機関から5000万円ずつ2回に分け、1億円の融資を受ける。それで持ち主に残金を払えば普通の売買だが、手付金だけで済ませてあとは金がないと言って残金を支払わない。 とうぜん訴訟になるが、和解に持ち込んで追加で3000万円くらい支払い、4000万円を懐に入れるというやり方だ。これだと民事不介入を原則とする警察は手を出しづらい。詐欺師たちにとっては、なりすまして売り払ってしまったほうが手っ取り早いが、実際は段階的にそれらを組み合わせ、不動産を乗っ取ってしまうのが地面師たちの手口である。