スルガ銀行「組織ぐるみの不正融資」はこうして起きた…なぜサラリーマンたちは不正に手を染めてしまうのか
三菱自動車やスズキの燃費不正、エンロン、ワールドコム、東芝の不正会計、ジェネリック医薬品の生産拡大によって生じた製薬業界の品質不正、冤罪の被害を受けた大川原化工機事件に象徴される軍事転用不正etc. 【図表で解説】組織不正が起きるカラクリ… 組織不正は、なぜあとを絶たないのか――。 組織不正がひとたび発覚すれば、企業の株価や評判は下がり、時には多くの罰金を払う必要が生じる。最悪の場合、倒産の可能性さえある。にもかかわらず、それでも組織不正に手を染めてしまうのはなぜか。 組織不祥事や組織不正の研究を続けている立命館大学経営学部准教授・中原翔氏が、組織をめぐる「正しさ」に着目した一冊、『組織不正はいつも正しい』から一部を抜粋してお届けする。
「機会」「動機(プレッシャー)」「正当化」の3つの要素で考える
なぜ組織不正はなくならないのでしょうか。 組織不正と聞くと、組織の中で誰かが間違った方法で自分の利益になることを思いつき、それが組織全体に広がるものと考えられるかもしれません。そのため、組織不正が発覚した場合には、「この不正を最初に考えたのは誰か」を探し出し、その人の責任を追及するといったことが少なくないように思います。 実際に、このような考え方の下で説明された組織不正というのがあります。二〇一八年のスルガ銀行不正融資事件です。 この事件は、スルガ銀行が投資用不動産の資金を必要としていたオーナーに対して組織的に不正融資を行っていたものです。なぜ不正融資が行われたのかについて、第三者委員会の調査報告書では、当時の営業部門が書類偽装するなどして審査部門に圧力をかけていたり、あるいは審査部門自体もその書類偽装を黙認していたなどと指摘がなされています(*1)。 つまり、この場合には、「この不正を最初に考えたのは誰か」として、当時営業部門で働いていた人や審査部門で働いていた人などの責任が問われたのです。
「不正のトライアングル」
それでは、なぜ人は不正を行ってしまうのでしょうか。不正が行われる理由を明らかにしたモデルとして有名なのが、犯罪学者ドナルド・クレッシーが理論化し、その後公認会計士であったスティーブ・アルブレヒトが精緻化した「不正のトライアングル」です。 このモデルは、人間がなぜ不正に手を染めてしまうのかを「機会」「動機(プレッシャー)」「正当化」という三つの要素で説明したものです。 まず、「機会」では不正行為を行う者は、いつ、どのような状況で不正ができるのかという環境を知っているとされます。そして、そのような「機会」において、不正を行うための「動機」を持ち合わせることによって不正行為に至るとされています。ただし、この「動機」とは自分が不正をしようという積極的なものだけではなく、不正せざるを得ない状況に追い込まれた場合のプレッシャーも含んでいます。 したがって、不正をする者は、自分が仕事上の責任を果たせそうになかったり、あるいは他者には打ち明けられない問題を抱えている時などに、「動機(プレッシャー)」をもち、不正に手を染めるのだとされています。