通勤形も動態保存の時代に 東急8500系電車
駅のホームには「突進する」ような速さで滑り込み、すうっと停止する。当時の国鉄や他の私鉄に乗り慣れていると、減速の性能に感心するばかりだった。ただし、雨や雪の日には、加速や減速が滑らかではなく、「ガクン、ガクン」と無秩序な速度変化を繰り返すのが玉にきずだった。駅の停車位置を通り過ぎてしまい、正しい位置までバックすることが何度もあった。それも懐かしい思い出だ。 8500系は10両編成が40本、計400両が製造され、一時は東急の最大勢力だった。新玉川・田園都市線だけでなく、東横線にも投入され、同社のフラッグシップのような存在になった。しかしどんなに最新技術を詰め込んだ車両でも、いつかは新しい車両に世代交代する運命にある。8500系も例外ではなく、少しずつ次世代の車両へバトンタッチしていった。 2023年に東急を退いたが、一部の車両は秩父鉄道や長野電鉄などのローカル私鉄で活躍している。はるばるインドネシアに渡った仲間もいる。東急で復活するのは短い4両編成だが、大井町線(大井町~溝の口)、田園都市線(二子玉川~長津田)、こどもの国線でイベント時の臨時列車として使われるという。往年の走りに期待したい。
☆共同通信・寺尾敦史