今後何が起こるのか。EUのEVシフトに暗雲「中国製EV排除」の制裁関税へ
ドイツのハンデルスブラットやロイター通信など複数のメディアが報じたところによると、欧州連合(EU)の執行部局である欧州委員会は、近く中国製の電気自動車(EV)に対する追加関税の導入を決定するようだ。欧州議会の国際貿易委員会のベルント・ランゲ委員長も、論点はすでに税率の水準の設定の段階にあると認めている。 【全画像をみる】今後何が起こるのか。EUのEVシフトに暗雲「中国製EV排除」の制裁関税へ 欧州委員会は2023年10月に、中国製EVが中国政府から不当に補助金を給付されていないか、調査を開始した。EUは域外で製造されたEVに対して10%の輸入関税を課しているが、中国製EVが中国政府から不当に補助金を給付されていると判断された場合、欧州委員会は中国製EVに対して追加で関税を課すという方針を示していた。 ※アメリカは5月14日、EUに先行する形で中国製EVに100%の輸入関税を課すと発表している つまるところ、欧州委員会は、中国製EVが中国政府から不当に多額の補助金を給付されていると判断したようだ。EUでは、1カ月後の6月6日から9日にかけて欧州議会選が予想されている。それよりも先に、ウルズラ・フォンデアライエン欧州委員長が追加関税の実施を正式に発表するという見方が有力視されているようだ。 欧州議会選の展開次第で、フォンデアライエン欧州委員長の続投の可否が決まる。二期目を狙うフォンデアライエン氏が、嫌中派が多数を占める欧州議会の支持を得るためには、欧州議会と同様に中国に対して厳しい姿勢を打ち出す必要がある。それには、欧州議会選より前に、追加関税の実施を表明する必要があるというわけだ。 今年の春になって、EUと中国では首脳間外交が活発化しており、5月には中国の習近平国家主席がEU各国を歴訪した。その際も、EUと中国の双方で、EVの競争条件に関する発言が相次ぐようになっている。こうした状況からも、追加関税を課したいEUとそれを防ぎたい中国の綱引きが活発化していることが読み取れる。