全員が顔を隠して踊る「日本三大盆踊り」とは?秋田県南部が仙台で観光PR
700年続く「顔を隠す盆踊り」ー羽後町の西馬音内盆踊り
そのひとつが、羽後町で行われる西馬音内(にしもない)盆踊りだ。約700年前に始まったというこの踊りは、国の重要無形文化財に指定され、徳島県の阿波踊り、岐阜県の郡上踊りとともに、日本三大盆踊りに数えられる。 イベントでも披露されたこの西馬音内盆踊り。野性的な囃し(はやし)に合わせ、踊り子が顔を隠して踊る。踊り子は2種類いる。色鮮やかな絹布の切れ端を縫い合わせた端縫い衣装に、半月型の編み笠を目深に被り、顔を隠して踊る。赤いあご紐と白いうなじのコントラストが鮮やかだ。もしくは、藍染めの浴衣に歌舞伎の黒子のように、彦三頭巾という黒い頭巾をかぶって踊る。 案内してくれた羽後町村役場の柴田絵美子さん(45)によれば、「身分の違いを気にしないで踊るため笠などで顔を隠すようになった。羽後町西馬音内地区では代々この踊りが受け継がれ、幼稚園児から大人まで皆踊れる」という。今年の開催は8月16日から18日。祭りでは、かがり火の中、力強い太鼓の音とともに、笠と頭巾をかぶった踊り子が踊る姿が、幻想的に浮かび上がるという。
うどんエキスポで、「もう宿が取れない」
香川県の讃岐うどんとともに、日本3大うどんに数えられるのが、湯沢市稲庭町の稲庭うどんだ。稲庭うどんは、つるつるとした食感が特徴的。その湯沢市では2011年から、「全国まるごとうどんエキスポ」が開催されている。日本全国のご当地うどんを集めグランプリを決定するこの熱いイベントは、昨年は2日間で9万人を集めた。湯沢市の人口は4万8千人なので、倍近くの人出があったことになる。 第5回の今年は10月3日と4日に開催されるが、「もうすでに宿が取れない状態」(佐藤さん)という。昨年のグランプリは、愛知県のガマゴリうどん。2位が豊橋カレーうどん、3位が地元稲庭うどんだった。全国各地のうどんが一堂に会するこの「うどんエキスポ」は、全国の麺好きには堪らないイベントになりそうだ。
「新幹線が来なくて良かった」時間をかけて体験する旅を提案
他にも、小野小町の出身地であることにちなみ、平安時代の衣装・市女笠をまとった小町娘たちが登場する「小町まつり」(湯沢市・6月)や、豪雪地帯であることを活かした「かまくら祭り」(横手市・2月)、犬っこまつり(湯沢市・2月)などさまざまなイベントがある。大根の燻製「いぶりがっこ」やB-1グランプリで優勝した「横手やきそば」など、食べ物の名産品も多い。豊富な雪解け水で作る日本酒も有名だ。 仙台市で開かれた今回のイベントには、3日間で3000人ほどが集まった。秋田県南部の魅力を伝えるPRイベントは、仙台では7月のほか、例年9月と11月にも開かれ、東京・神田駅西口でも2年に1度開かれている。 佐藤さんは、「湯沢に新幹線が来なくてよかったと思うんです」と話す。「新幹線が出来ても、有名な観光地を見たらすぐ別の場所に行ってしまう。それよりも、お金をかけずに時間をかけて、温泉に浸かり、ゆっくり過ごす旅を提案したい。自然や文化を体験する旅先として、秋田県南部の魅力を伝えたい」。なかなか注目されることのない秋田県南部への観光だが、南部でしか味わえない魅力がありそうだ。(中野宏一/THE EAST TIMES)