2025年のデータセンター市場展望
生成AI(人工知能)の普及拡大とともに、世界各地でデータセンター(DC)の建設ラッシュが続いている。日本でも各地でDCの建設や用地取得が進む。20日にはシャープが堺工場の一部をソフトバンクに売却すると発表した。ソフトバンクは取得した用地にAI向けのデータセンターを構築する計画。米アマゾン・ウェブ・サービスは2027年までに東京や大阪のDCに対し2兆2600億円を投資する計画があるなど、大規模なDC投資が続く。AI時代における社会インフラとも言えるDC。25年以降も市場拡大に期待がかかる。 ハイスペックなデジタルインフラを提供 「24年はAIへの投資が急拡大し、DC市場も急成長した年だった」と話すのは、MCデジタル・リアルティの畠山孝成代表取締役社長。同社は三菱商事と世界に300以上のDCを保有する大手DC事業者である米デジタル・リアルティによる対等出資の合弁会社だ。三菱商事の不動産・インフラ投資に関する知見とデジタル・リアルティのグローバルなDCプラットフォームやDC開発・運用ノウハウを生かし、幅広いDCサービスを国内で提供している。国内3カ所で計8棟のDCを運用しており、24年の運用DCサーバー用電源容量は168メガワットとなっている。3月に千葉県印西市のNRTキャンパス内で新DCが稼働開始した。同キャンパス内に新たなDCも建設中で、25年12月の開業およびサービス提供開始を予定している。 同社が提供しているのは①大規模なDCサービス(ハイパースケール)②1ラックから利用可能なコロケーションサービス③DC内、DCキャンパス内を相互に接続するインターコネクションサービス――など。大規模AIやHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)の需要に応えるハイスペックなインフラを整備しており、米エヌビディアの「DGX H100」「DGX SuperPOD」「DGX H100 SuperPOD」などに対応するDCとして、エヌビディアの認証も取得している。 畠山社長は「複雑なAIワークロードや機械学習などの需要に応える最適な設備を備えている。堅ろう性に優れ、高度な電源設備・冷却設備を提供可能で、日本でも有数のDC事業者と自負している。ハイスペックなDCの提供を通じ、企業の競争優位性の源泉であるデータ・AIの活用、イノベーションの創出を支援する」と話す。 25年もDC需要は加速度的に拡大 25年の市場見通しとして、AI時代が本格化しDC需要は加速度的に拡大すると畠山社長は見込む。経済安全保障や地政学上の観点から日本はアジア太平洋地域における最重要市場と位置付けられている。データは国家安全保障の問題として扱われ、データを自国のDCで保管・運用していく流れとなっていく。また、大手クラウド事業者は兆円規模で日本国内でのDC関連投資を計画しており、研究開発拠点も含め国内に開設が続く。25年も好調に市場拡大が進むと予想する。 DCの消費電力が大きな課題 一方、業界としての課題もある。中でもDCで消費される膨大な電力は大きな課題。エネルギー基本計画が見直されていく中、政策的な後押しや制度改善なども必要となる。AIインフラ構築における都心と地方の開発整備や専門家人材の育成なども課題だ。畠山社長は「25年以降もDC需要は拡大し、日本は大きなプレゼンスを発揮できる市場となる。既存キャンパスをベースとした事業拡大に取り組み、サービス拡充によるエコシステムの強化につなげていく。中小企業などの利活用を後押しするため、1ラック以下でも利用できるコロケーションサービスに注力する。DCの消費電力問題については、環境負荷の低いDC設計やコロケーション用サーバールームの電力を実質100%再生可能エネルギーの利用に切り替えるなど、サステナブルな社会の実現に向けた取り組みを加速させていく」と話す。
電波新聞社