<ラグビー>日本代表の戦術強化にドローン活用
また、ドローンが映せるのは、テレビ中継のような横長サイズのビジョンだけではない。ゴールラインを見据える選手の視線をそのまま上空へ引き上げたような、縦長サイズの俯瞰図も示される。結果、守備網の裏のキックを蹴るべきスペースを具体的に把握できる。 スタンドオフ立川理道の言葉は、そう証明していた。 「横からの映像では相手と(自分の)距離感がなかなかわからない。ただ、ドローンは縦のラインで(グラウンドを)観る。だから『右側の後ろが空いている』『左側の後ろが空いている』という部分もしっかりとわかる。『実際その時に自分がどう判断したか』を踏まえながらレビューできます。判断のバリエーションがついたり、間違った判断をしていたことがわかったりする」 ジャパンはあくまでシェイプの形成とランとパスを軸に戦う。ただ、そのスタイルをより勝利へ近づけるために、効果的なアクセントとしてのキックもオプションに含み込んでいる。「仮想南アフリカ代表戦(9月18日の初戦で激突)」として挑んだ5月2日の香港代表戦(東京・秩父宮ラグビー場でのアジアラグビーチャンピオンシップ第2戦、41-0で勝利)でも、その意図は示されていた。 「言葉にするのは難しいですけど…。僕は『こう』じゃなくて、『こう』グラウンドを観ようとしている」 田村優。チームのキック戦略で鍵を握るセンターは、自分の視野についてこう説明した。前者の『こう』では手のひらを目の前でまっすぐ伸ばし、後者の『こう』では頭の上から視線の先へ腕を振り下ろす。要は、グラウンドレベルにいながらグラウンド全体を「上から」眺めるようなスタンスで試合を組み立てているのだ。 そうした「感覚」を現象の例示で補完するのが、田村にとってのドローンの映像なのだという。「見張られている感じがする…」と苦笑しつつ、手応えを語る。 「役立ちますよ。感覚的なところを養うのには、すごく。(キックは)結構、任されている。蹴れるかどうかの判断を、周りとしゃべりながらやっていきます」 いま、指揮官は事あるごとに、「すべてはワールドカップへの準備です」と連呼する。海外視察も、最新鋭機器による空撮も、何より1日3部練習は当たり前という常軌を逸した日々も、すべては、「ワールドカップへの準備」なのだ。 (文責・向風見也/ラグビーライター)