「ビックリ、信じられない…」ジャンプアップで金メダル獲得 充実のトレーニングライフでマイペースに進む女子フィジーク道
8月11日に開催された「第35回ジャパンオープン選手権大会」の女子フィジーク部門を制した新沼隆代は、「本当にビックリで。信じられないです…」と、困惑とも言える表情を大会後に見せた。 【フォト】背中までバリバリな新沼のステージフォト
今大会は、無差別級の争いで日本一を決する「日本選手権」、階級別の日本一(女子フィジークは身長別)を争う「日本クラス別選手権」に次ぐ、“日本”を冠する権威ある大会だ。「オープン」という名の通り、JBBF(日本 ボディビル・フィットネス連盟)の登録選手であれば誰でも出場できる大会であるが、実態として、上位入賞選手はそのまま日本選手権でも上位に絡んでくるというハイレベルな戦いが毎年展開される。昨年の今大会を制した荻島順子は、そのまま日本選手権で女王となったのは記憶に新しい。 「優勝できるとはまったく思ってなくて。去年は関東クラス別選手権では優勝をいただけましたが、自分でも記憶にないぐらい良くなくて。何か実績が残せたわけではなかったので…」 そう話すように、昨年は日本クラス別選手権の163cm以下級で4位。メダルを獲得した澤田めぐみ、阪森香理、清水洋子と比べても、壁一枚の隔たりがある印象であった。この日も、結果的に準優勝となった原田理香(昨年の日本選手権7位)が下馬評では優勝候補であり、新沼も上位に絡んでくるだろうという予測はできたとしても、1週間前に行われた東京選手権では4位だったため、本人が困惑するのも無理はない。 ただ、ボディビル競技においてはその日のステージが全て。実際に他の選手たちと並ぶと、ウエストの絞りやバリっとした肌感、くっきりとした腕の筋肉のカットや全体的に美しくまとまったバランスの良さで頭一つ抜けた存在感を見せた。7人の審査員のうち5人が彼女に1位票を入れた通り、完勝と言えるステージングであったと言えるだろう。
「去年から何かを大きく変えたということはありません。ただ、トレーニングに向き合う気持ちをなんとなく変えていけたのかなって思います。有名な選手の言葉を読んだり、聞いたりして、それを自分なりに解釈してトレーニングをするようにしてきました。フリーポーズは指先まで神経を行き届かせるように気持ちを込めるように、女子フィジークならではの見せ場だということを大事にしてきました」 次に目指すところは、日本クラス別、日本選手権での上位入賞になるだろうが、「また一つずつやっていきます」と話すように、現状での出場は未定とのこと。 「女子フィジークの競技は、すごく魅力的です。やればやるだけわからないことが出てきて、わかることも出てきて…それを日々繰り返してる感じ。筋肉を付けるのは難しいけど、そこでカラダを変化させていくというのも魅力的です。そして1番好きなのは、フリーポーズ‼ステージ上での1分間は、最高に気持ちがいい。これまた奥が深くて楽しい、やめられない…。来年まで、また楽しんで、苦しんで…苦しさも楽しんでいけたらなと思ってます」 これは彼女が昨年のシーズン終了後に自身のSNSで綴っていた言葉である。今年の東京選手権で4位と上述したが、2020年のコンテストデビュー以降、21年は8位、22年は6位、23年は5位と、ゆっくりと確実に階段を昇ってきた。これからも充実のトレーニングライフの中でマイペースで少しずつ進化を遂げ、次のステージではさらにスケールアップしたボディを見せてくれるはずだ。
文・写真/木村雄大