黒ずくめで銀座の高級時計店に押し入ったわけ…「岐阜で空き巣」からはまった犯罪の沼 「匿流」に絡み取られた20歳は、法廷で「上位者」への恐怖を語った
岐阜地裁の法廷には男の母親が出廷した。銀座事件翌日の午前3時ごろ、尋ねてきた警察から、息子の逮捕を知らされた。「うちの子が強盗事件に関わっているなんて思えなかった」と声を詰まらせた。男には祖母がいる。被告人質問で、岐阜事件で高齢の被害者が大けがをしたことについて、どう思うか問われ「おばあちゃんが同じ事をされたら怒りが沸いたり、心配したりすると思う。被害者と家族に対して申し訳なく思う」と語った。 論告で検察官は「大胆で危険かつ凶悪な犯行。事件の社会的影響は大きい」として懲役13年を求刑。初公判で結んでいた髪を切り、丸刈りになった男は結審前、裁判官から最後に言いたいことはと聞かれ「大丈夫です」と一言だけ発した。 ▽「捕まった子たちは、恐ろしさが分かっていない」 今年7月10日の判決で、岐阜地裁は、岐阜事件について「血気盛んな実行犯を誘い入れ、自らの判断で電話をつなぎ具体的な指示を出すなど、伝達役以上の役割を果たした」と指摘。銀座事件では、実行役の中で中心的な役割を果たしたとし、「白昼堂々と行われた犯行で一般人に恐怖心を与えた」と非難した。「そもそも岐阜の事件に加わったことで自ら招いた事態である」として、2事件で懲役10年を言い渡した。男は期限までに控訴せず、判決が確定した。
二つの事件を巡っては、関与が疑われるとして10代の男が多数逮捕され、公判で「北斗」らの他に、「5(ファイブ)」と名乗る「上位者」の存在も明らかにされた。ある捜査幹部は一連の事件は交流サイト(SNS)などでつながる「匿名・流動型犯罪グループ(匿流)」による典型的な事件だと見る。「匿流の裏には暴力団が絡んでいる可能性は高い。警察に協力したら、服役後でも報復を受けかねない。捕まった子たちは、残念ながらこの恐ろしさが分かっていなかった」と話す。 × × 龍谷大学矯正・保護総合センターの研究員で、犯罪社会学者の廣末登さんの話 統括・指示役は実行役に報酬を支払うつもりはなく、犯罪だけさせる。実行犯は捨て駒に過ぎない。報酬を払うといって、次の犯罪に使われる。最初は受け子などの比較的軽いものから入らせ、犯罪者にさせる。徐々に強盗や強盗致傷などの凶悪犯罪に引き込む。 1回手を染めると逃げられず、第2、3回もやらざると得なくなる。1回目で捕まらなくても、数を重ねるうちに絶対に捕まる。指示役や統括役に血の涙はない。先日警察庁が「闇バイトに手を染めようとしている人を保護する」と言った。受け子などを既にしていても、まだ引き返すことができる。強盗など次の犯罪に誘われても、行かずに警察に連絡をしてほしい。
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