大会に向け、伴走者（右）とともにランニングに励む柳川さん（17日朝、佐賀市で）

　26～28日に佐賀県で開かれる全国障害者スポーツ大会（全障スポ）の視覚障害者向けの野球「グランドソフトボール」に、1996年のアトランタパラリンピックのマラソンで金メダルを獲得した柳川春己さん（68）（佐賀市）が出場する。同県での全障スポは、前身の大会から約50年ぶりで、柳川さんは「障害者に自分も挑戦できるスポーツがあることを知ってもらうよい機会」と意気込んでいる。（田中大稀） 【写真】国民スポーツ大会の陸上競技を観戦される佳子さま（15日午前、佐賀市のSAGAスタジアムで）

　弱視だった柳川さんは、特別支援学校に通っていた8歳の頃、小児緑内障で視力を失った。それでもスポーツに親しみ、ボールを転がし、バットで打つグランドソフトボールに熱中した。

　卒業後、鍼灸院を開業。89年に友人に誘われ、大分県で開催された視覚障害者向けのマラソン大会で、3キロの部に出場した。体力に自信があったが、約20歳年上のランナーに及ばなかった。悔しさから、長崎県に住むその男性の元に押し掛け、練習方法を学んだ。

　教え通り、近くの小学校で練習に励んだ。コースをはみ出さないように、校庭の中心に立てたポールと自分の体をロープでつなぎ、スタート地点に置いたラジオを目標に周回した。

　練習で記録は伸び、海外の大会にも出場できるほどになった。92年にはバルセロナ大会で6位入賞し、96年アトランタ大会で金メダルに輝いた。2000年のシドニー大会で6位に入賞した後、左膝を故障。アテネの選考会に落選した。

　その後はトライアスロンに取り組み、大会に出場。ただ、新型コロナウイルス禍で大会が中止になったことをきっかけに、競技から遠のいた。

　一方、18年に念願だった地元での全障スポ開催が内定した。「仲間と支え合い、目標に向かって進んでいく姿を見せたい」。柳川さんはメンバーを募り、グランドソフトボールへの出場を決めた。

　大会に向け、ウォーキングやランニングに加え、グランドソフトボールの練習に取り組む。実際の試合と同じように、ボールが転がったり、コーチが手をたたいたりする音を頼りに、打撃や守備といったプレーを確認する。

　競技は26日から始まる。柳川さんは「障害者と健常者が、スポーツの喜びを共有できる社会を作る大会の第一歩になればいい」と期待を込めた。