スズキ本社にも立ち入り検査 「型式指定」認証不正
自動車などの大手5社の「型式指定」を巡る認証不正問題で、国土交通省は6日、道路運送車両法に基づき浜松市中央区のスズキ本社に立ち入り検査した。同社の報告書を基に、事実関係や試験データの確認、関係者へのヒアリングなどを行った。立ち入り検査はトヨタ自動車、ヤマハ発動機に続いて3社目。 国交省の職員3人が午前9時前、本社に入った。対象車両は2014年11月に型式指定を受け、同年12月から17年12月まで販売した軽自動車「アルト」の貨物仕様車。申請時、ブレーキを繰り返しかけた時の停止距離を測る試験結果で、実際と異なる値を記載する不正が発覚した。法規要件を満たしていたが、踏む力が弱く求めた数値でなかった。期限まで時間がない中、規定に近い力で踏み込んだと想定した意図的な書き換えが起きたとみられる。 同社は16年に燃費測定に関連して不正が発覚し、組織風土改革を進めた。16年時は燃費関連の調査が中心だったという。今回はそれ以前の事案で、現在は独立した組織が立ち会って試験などを確認する手順に改められ「今回のような不正は起きない」としている。 取引先やユーザーは厳しい反応を寄せた。取引のある県西部の部品メーカーは「メーカーの責任として確実にやってほしい」と注文。軽自動車に乗る浜松市内の70代の男性は「利益を上げているのだから、ユーザーに安全と信頼で還元を」と批判した。 国交省が検査を行った同日、本社・工場に出勤した従業員も一様に厳しい表情。30代男性従業員は「信頼回復に努めるだけ」と声を振り絞った。 国交省によると、ヤマハ発動機への検査は6日まで2日間で終了した。スズキは7日も継続する。同省は検査結果を踏まえ、行政処分などを検討する。 ■いち早い信頼回復を 磐田市長 自動車など大手5社で「型式指定」の認証試験で不正があった問題について、不正が発覚したヤマハ発動機の本社やスズキの工場がある磐田市の草地博昭市長は6日、「(両社には)真摯(しんし)に対応し、いち早い信頼回復に努めてほしい」と述べた。定例記者会見で質問に答えた。 取引先や販売店も多い地域経済への影響について「(不正の対象車種の)安全性に問題はないと聞いているし、販売台数も少ないので、最小限になると思う。ただ、ブランド力という点では信頼が揺らぐ」との見解を示した。「企業側が勝手に規定されたプロセスを変えるのはよくない」とした上で、「技術は進歩している。今後、国と業界が一緒になって認証ルールの見直しも含めた議論をするべきではないか」と指摘した。
静岡新聞社