給料が上がっても、手元に残るお金が少ないのはなぜ? 物価と関係する「名目」「実質」のふたつの賃金 横川楓
今年の春闘では多くの企業が賃上げしたことがニュースになり、社会全体として「お給料アップ」の流れがある今日この頃。ですが、実感として「全然お給料が上がっている感じがしない……」という方も多いのではないでしょうか。それもそのはず。先日、こんなデータが発表されたと報じられました。 * * * 「実質賃金、23カ月連続で減少 2月1.3%減、給与増でも物価高く」(4月8日配信、朝日新聞デジタル) 厚生労働省は8日、2月分の毎月勤労統計調査(速報)を発表した。物価の影響を考慮した働き手1人あたりの「実質賃金」は前年同月より1.3%減り、23カ月連続で減少した。比較可能な1991年以降で、2007年9月~09年7月と並んで過去最長。物価が賃金の上昇を上回る状況が続いている。 私たちの賃金を測る指標として、「名目賃金」と「実質賃金」があります。 「名目賃金」は、私たちが実際に受け取った給与のこと。そして、「実質賃金」は名目賃金に物価上昇率を加味して算出されたものを指します。 このニュースにあるとおり、「実質賃金が減っている」というのは、私たちがもらっているお給料の金額では、物価の上昇に追いついていないということになります。 つまり、入ってくるお金が増えたとしても、日々の生活のために出ていくお金が多い状況であるともいえるでしょう。 ■入ってくるお金が少ない中で、金融資産の状況は? そんな中でも、私たちは日々生活し、お金をやりくりしていかなければなりません。そこで多くの方が気になるのは、そうはいっても実際にほかのみんなはどのくらいお金を持っているのか、ということではないでしょうか。 若い世代を中心に、チェックしていきましょう。
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和5年)」によれば、20代の金融資産保有額は平均で121万円、中央値で9万円。30代で平均が594万円、中央値が100万円となっています。金融資産とは、預貯金だけでなく、株式や投資信託、財形貯蓄などを含んだものです。 平均値は、極端に数字が大きい人が少数でもいれば吊り上がるので、リアルに近い数字としては中央値のほうともいえます。 若い世代の方から「なかなかお金が貯まらない……」という声をよく聞きますが、中央値で見れば20代の若者で9万円、30代でも100万円……と考えると、やはり手元に残るお金が少ない分、預貯金金や金融商品などに回すお金がない人が多いことが、この数字からもわかりますね。 ■お金が増えない…どうしていくべき? 今年の春闘でお給料が上がったという方もいらっしゃると思いますが、一気に何倍にもなるわけではないですし、物価もすぐに下がっていく見通しもありません。引き続きしばらくは、手元に残るお金が少ない状況が続いていくことでしょう。 そんな中でも、手元のお金を増やしていくためには、やはり新NISAなどを活用し、能動的に増やしていくことに目を向けることがとても大事です。 新NISAであれば、100円からでも投資をしていくことができます。もちろん投資にはリスクがつきものですが、ただ貯金をしているだけではお金は増えていかないのです。 入ってくるお金が少ないうちでも、若いうちから少額でもいいので積み立て投資などを続けていくといいでしょう。 横川楓(よこかわ・かえで) 1990年生まれ。経営学修士(MBA)、ファイナンシャルプランナー(AFP)などを取得し、「やさしいお金の専門家/金融・経済アナリスト」として活動。一般社団法人日本金融教育推進協会代表理事。「誰よりも等身大の目線でわかりやすく」をモットーにお金の知識を啓発、金融教育の普及に取り組んでいる。著書に『ミレニアル世代のお金のリアル』(フォレスト出版)、『お金の不安と真剣に向き合ったら人生のモヤモヤがはれました!』(オーバーラップ)。
横川楓