パナソニック「40年超」続いた品質不正の全実態、約5200製品が該当、海外工場へ不正を“輸出”
例えば三重県の四日市工場、南四日市工場では、1980年代から成形材料や封止材料の品質不正が続いていた。成形材料は自動車や家電の部品に用いられる樹脂材料で、封止材料は半導体素子を覆うための樹脂材料だ。 これらの製品は、アメリカの製品安全規格であるUL認証を受けたとして製造、出荷されていた。しかし実際には、UL認証を受けたときとは異なる材料の配合で製造したものが成形材料で60品番、封止材料で43品番見つかった。
このうち成形材料では15品番、封止材料では22品番がUL認証が求める難燃性のグレードに達していなかった。材料の配合を変えた場合には化学組成の分析や燃焼試験が必要となるが「開発期間を短縮させるため」(調査報告書)などの理由で、必要な試験や承認プロセスが省略されていた。 ■タイや中国の工場へも広がる 不正は連鎖していく。上記の不正が発覚しないようにするため、四日市工場や南四日市工場では認証機関による定期検査で不正を行っていたのだ。
具体的には、3カ月に1回実施されていたULの工場検査担当者による検査で、別品番の製品や、提出用の特別なサンプルを提出していた。UL側から指定された品番の難燃性が規格を満たしていない場合に、そのことを隠すためだった。 こうした不正の発覚を逃れるための手法は、海外の工場にも広がっていった。タイのアユタヤ工場では、プリント基板の材料となる銅張積層板について、UL認証に登録された配合とは異なる製品を製造・販売していた。
調査報告書によれば、2013年頃に当時の日本人駐在員の指示で、認証機関からの監査を通過するための特殊なサンプルの製造方法について、マニュアルが作成されている。 国内外の拠点間で定期試験をクリアするための特殊なサンプルの融通や、製造方法の共有を求めたケースも確認されており、不正を隠蔽するための不正は国境を越えてどんどん広がっていったことがわかる。 さらには、顧客に提出するデータの捏造・改ざんも行われ、子会社トップまでもが隠蔽に関与していくことになる。(後編)へ続く
梅垣 勇人 :東洋経済 記者